地方経済

空き店舗 重い家賃「諦めるしか」 【ウィズコロナ 変化の中で】<第1部 縮む町>(1)

2020/12/7 22:23
閉店し、シャッターが下りたままの店舗。本通り商店街には「テナント募集」の張り紙が目立つ(撮影・川村奈菜)

閉店し、シャッターが下りたままの店舗。本通り商店街には「テナント募集」の張り紙が目立つ(撮影・川村奈菜)

 ▽ネットが浸透、逆風に

 華やかな電飾が彩るアーケード街に、シャッターを半分下ろした衣料品店があった。11月27日午後8時すぎ。従業員が店内から洋服やマネキンを次々と運び出す。この日で閉店を迎え、撤去作業が進んでいた。中四国地方最大の商店街、本通り商店街(広島市中区)。新型コロナウイルスが流行した今年、こんな光景が繰り返された。

 土産物などを扱っていた雑貨店もその一つ。外国人を含む観光客の来店が感染拡大でぱったり途絶え、秋に店を閉じた。「本通りは憧れの場所だった」と50代の経営者。10年営んだ店を畳む判断はなかなかできなかった。大喜びしたオープンの日、広島を好きになって帰ってもらいたいと接客に励んだ日々…。楽しくも苦しくもあった思い出がよぎった。強まる苦境の中でも決心には時間を要した。

 昨年10月の消費税増税から売り上げが鈍っていた。中国でコロナが猛威を振るい始めた1月以降、外国人客が遠のいた。じわじわと売り上げが減る中、望みを託した東京五輪は3月下旬に延期が決定。五輪関連商品の仕入れ代も重荷になった。金融機関の緊急融資や国の給付金もフル活用したが活路は見いだせなかった。「もう諦めるしかなかった」と肩を落とす。

 ■あちこちに掲示

 中心街を東西に貫く本通り商店街。約600メートルの通りには今、閉店や移転を告げる張り紙が目立つ。「テナント募集」の掲示もあちこちに。商店街振興組合副理事長で婦人服店を営む高田諭さん(57)は「一度にこんなに空き店舗が出たことはなかった」とつぶやく。

 緊急事態宣言下で迎えた5月の大型連休の人出は、感染拡大前の約2割に落ち込んだ。師走の人通りは戻ったかに見えるが「よく買い物をしてくれる中高年層は外出を控えており、商売はいっそう厳しい」と説明する。

 多くの店にのしかかったのは家賃だ。本通りは固定資産税が高く、ビルオーナーは家賃を下げるのが難しい。一帯の物件の賃貸を仲介するゼネラル興産(中区)の清戸隆之専務(54)は「高い家賃も本通りブランドの宣伝料と受け入れられてきたが、コロナ禍では厳しい」とみる。家賃の相場は、1階の店なら近くの袋町や立町の同じ広さの店の1・5〜2倍という。

 ■出店意欲も低く

 それでも以前はテナントが退去を決めた直後に、次が見つかるケースが多かった。今は違う。どの事業者も出店意欲が低く、空き店舗が目立っている。

 こんな見方もある。インターネット通販とせめぎ合っていた商店街に、コロナが追い打ちを掛けた―。婦人服店社長の原田亮二さん(56)は「ニーズや販路が多様化し、広島の顔である本通りでさえも個店の商売が難しくなっていた」と打ち明ける。非接触で感染リスクを減らせるネット通販が浸透し、逆風は強まった。

 「どの店もコロナに負けまいと踏ん張っている。これからも訪れたいと思わせる街でありたい」。商店街振興組合の理事でもある原田さんは収束後を見据える。個店単独ではなく、街全体で魅力づくりができないか。考えを巡らせている。(新本恭子)

    ◇

 新型コロナウイルスが、企業活動や暮らしを一変させた。各地で閉店が相次ぐ。観光客が姿を消し、公共交通機関の利用者も激減した。その中でも事業者は新たな商いを模索する。コロナ時代の生き残り策を生み出そうとしている。中国地方の現場で変わる営みを見た。

 【アドバイス】小さな行動、繰り返そう 広島修道大国際コミュニティ学部・木原一郎准教授(41)=エリアマネジメント

 新型コロナウイルスの地方都市へのダメージは大きい。広島市西区のJR横川駅北口でも、リニューアルしたガード下の店が埋まらない。流行の収束は見通せず、行政の支援策に頼ってばかりでは駄目だ。

 商店街は一帯の価値を高め、発信することも大切だ。例えばエリアがまとまって屋台を並べ、通行人にアピールしてみる。街に来た人が新たな出会いを体験できたとき「また来たい」と思ってもらえる。

 地域で何か取り組むとき、まずは「LQC(ライト・クイック・チープ)」と呼ぶアプローチから始めるといい。小さく簡単でも行動を繰り返す中で味方が増えていく。ヒントが欲しいときは大学も相談先として知っていてほしい。客観的な立場で支援できる。

 コロナ収束後も消費者の行動は前と同じには戻らないだろう。価値観が大きく変わった今だからこそ進化を続けないといけない。 


【ウィズコロナ 変化の中で】
<第1部 縮む街>
(1)空き店舗 重い家賃「諦めるしか」
(2)揺れる営業 「客数多く」の常識崩壊
(3)消えるネオン 減る社用接待、ラウンジ限界感じ
(4)終電前倒し 利用戻らず便数も削減
(5)背水の商店街 動画発信・横の連携強化


この記事の写真

  • 木原一郎准教授

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

同じ日の経済ニュースの記事
一覧