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【フィーチャー】「70歳就業」整備これから 4月から努力義務化 中国地方、66歳以上対応は15・5%

2021/2/17 22:14
電車の進路を変える装置を点検する浜野さん

電車の進路を変える装置を点検する浜野さん

 ▽膨らむ人件費に懸念も

 高年齢者雇用安定法の改正で4月、企業は希望者が70歳まで働き続ける就業機会を確保する努力義務を負うことになる。少子高齢化で働く世代が減る中、中国地方の企業には65歳まで雇用を継続する仕組みがほぼ定着し、シニアの働き手は増えている。たださらなる年齢の引き上げには課題が多く、取り組みは道半ばだ。

 広島電鉄(広島市中区)の浜野恒行さん(67)がヘルメットに作業着姿で沿線を回り、点検を続けていた。電車の信号や、進路を変える装置などの維持管理が仕事だ。1982年に中途で入社後、技術畑一筋。今は1日8時間、週4日働く。終電から始発までの夜勤の日もあるが「慣れた仕事で働きやすい」と充実感をにじませる。

 同社は2010年に定年を60歳から65歳に引き上げた。17年には最長66歳のシニア社員の対象を従来の運転士と車掌から、技術、事務職にも拡大。上限も70歳にした。浜野さんは「70歳まで働きたいと思っていた。ありがたい」と喜ぶ。

 ▽「65歳まで」定着

 60歳以上の従業員は268人と全体の14・5%を占める。人数は10年から約100人増えた。同社は「技術の伝承に加え、人手不足の解消につながっている」と利点を説明する。

 65歳までの雇用は定着しつつある。13年の高年齢者雇用安定法の改正で、希望者を65歳まで雇うよう企業に義務付けた。中国地方の各労働局によると、昨年6月1日時点で従業員31人以上の企業の80・3%が対応。13年の改正法は25年までの段階的な環境整備を認めており、対応中を含めると99・9%に達する。

 だが66歳以上となるとこれからだ。希望者全員を雇用する企業は15・5%にとどまる。求職者の門戸も狭い。半年近く探して仕事が決まった広島県内の女性(66)は「年齢不問とうたっていても現実は違う。面接を受けられることがほとんどなかった」と振り返る。

 そんな中で迎える再度の法改正。70歳までの就業機会の確保が努力義務となる。広島労働局の中山明広局長は「労働力人口が減り、高年齢者の力が必要になる。制度の周知に力を入れ、徐々に浸透させる」と述べる。

 シニアが働きやすい職場作りも始まっている。汁なし担々麺の専門店キング軒を運営するキングファクトリーグループ(中区)が昨年12月、尾道市に開いた店もその一つ。自動で麺をゆでる設備を導入し、負担を軽くした。別の拠点で集中的に調理する方式を採用しており、仕込みも省けて味のばらつきもないという。

 現在は70歳前後の2人が働く。渡部崇社長は「投資をして、仕組みを整えれば問題なく働ける」と、今後も積極的に雇う考えだ。

 ▽体力には個人差

 課題もある。広島県内の上場企業の役員は「70歳まで全員を受け入れるとなれば全体の人数が増え、新卒採用に響きかねない」。地場メーカーの役員は「体力や視力など身体機能の衰えるスピードは人によって違う。一律でというのは難しい」と悩む。

 県立広島大大学院の木谷宏教授(人事管理)は年齢の上限が上がることで「企業にとっては人件費が重荷になる」と指摘。「給与体系を年齢中心から役割や職務を基準にするなど、仕組み作りに工夫が必要だ」と説明する。(口元惇矢)

 【記者の目】働きたいシニア 受け皿づくりを

 「年金だけでは不安」「家でごろごろするぐらいなら体を動かしていたい」…。働くシニアに尋ねると仕事を続ける理由はさまざまだった。人生100年とも言われる時代。働きたい人はもっと増えるだろう。取材で会った人たちのように生き生きと勤めるには、雇用年齢の引き上げに加え、誰でも仕事に打ち込める職場づくりが不可欠だ。

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