地方経済

初の量産EV、進化なく退場 三菱アイ・ミーブ3月末生産終了【フィーチャー】

2021/3/24 21:43
岡山県が公用車として使っているアイ・ミーブ

岡山県が公用車として使っているアイ・ミーブ

 ▽価格・走行距離改善できず 技術蓄積、次代の礎に

 三菱自動車が水島製作所(倉敷市)で2009年から造ってきた電気自動車(EV)アイ・ミーブが、今月末で生産を終える。世界初の量産EVとして普及の先導役を担ったが商品改良が大きく進まず、割高な価格や短い走行距離から販売の低迷が続いたからだ。今後は、企業連合を組む日産自動車と共同開発する軽自動車のEVでノウハウを生かすことになる。

 岡山県庁の地下駐車場に、充電中のアイ・ミーブが並ぶ。09年度、県が20台を公用車としてリースで導入した。3県民局、6地域事務所でも使っている。担当者は「給油しなくてよいので、近距離の移動には好まれている」と話す。

 アイ・ミーブは、三菱自が06年発売の軽自動車アイを基に開発。10年に登場した日産のリーフと並ぶ「EV時代」の先駆けで、フランスのプジョー・シトロエン・グループへも相手先ブランドによる生産(OEM)で供給した。EV愛好家でつくる日本EVクラブ(東京)の舘内端(ただし)代表は「技術的な課題などを突破して市販した意義は大きい。世界中で参考にされたはずだ」と評価する。

 ▽販売大きく低迷

 地元も生産、普及を後押ししてきた。電池の搭載で重くなりがちなEV向けに、部品メーカーは軽量のサスペンションなどを開発。県は09年に企業、大学などと県電気自動車等普及推進協議会を設立した。県内の自治体もEVや充電設備の購入への補助金を充実させ、20年5月時点で27市町村のうち11市町村が独自の制度を設けている。

 ただ、アイ・ミーブの販売は苦戦した。OEMを除く累計販売は50カ国で計2万3千台余り。三菱自は発売当初「3年目以降の早期に年1万台」と目標を掲げたが、大幅に下回った。

 ネックになったのは価格だ。発売時から約160万円下がったとはいえ、300万3千円する。補助金を使っても小型車としては高い。1回の充電で走れる距離も最大約160キロにとどまり、充電インフラが完全に整わない中で消費者の不安を拭い切れなかった。

 中国地方の三菱自系販売会社の担当者は「EV専用の車体ではなく、性能の向上に限界があった」と推し量る。「高くてもEVを買う人は、所有自体が価値と考える。見た目がアイとほぼ変わらず、納得感を得にくかった」とも明かす。地元の活動も下火になり、県によると県電気自動車等普及推進協議会は12年度から「休眠状態」という。

 ▽地元に惜しむ声

 ただ地元には生産終了を惜しむ声もある。12年から乗り続ける倉敷市の自営業高橋利英さん(48)は「世界初の量産EVが生産されたのは市民の誇り。導入コストや走行距離に不満はあるが、街中も高速道路もスムーズに走れる」と語る。

 三菱自は今、約80億円を投じて水島製作所を増強している。日産が23年度までに発売する新たな軽EVを生産するためだ。部品メーカーでつくる岡山県自動車関連企業ネットワーク会議の会長を務めるヒルタ工業(笠岡市)の昼田真三会長は「実績重視の自動車産業で、アイ・ミーブで培った技術は決して無駄にならない。EVが世界的な潮流になる中、新型軽EVに期待したい」と力を込める。(秋吉正哉)

 【記者の目】新たな「軽」で今度こそ波に

 「時代を先取りしすぎていた」。アイ・ミーブの生産終了について岡山県内の関係者に取材すると、同じような答えが返ってきた。今や国内外のメーカーが次々とEVを発売。選択肢が広がり、競争は激しさを増した。水島製作所で生産する新たな軽EVは今度こそ時代の波に乗り、地場の部品メーカーなどの期待に応えてほしい。


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