リポーター発

ドイツ

空爆犠牲者 追悼の調べ

2014/4/4
コンサートで指揮するクリスチャン・ティーレマン((C)Matthias Creutziger)

コンサートで指揮するクリスチャン・ティーレマン((C)Matthias Creutziger)

 「エルベ河畔のフィレンツェ」と呼ばれるドイツ東部の都市ドレスデン。第2次世界大戦終結を間近に控えた1945年2月13日から3日間続いた英米軍の無差別空爆で街の80%が焦土と化し、市民約2万6千人が犠牲となったとされる。空爆の始まった2月13日には毎年、市内各地で追悼行事が開かれている。
 2月13、14の両日には、ドレスデン国立管弦楽団と同合唱団による追悼記念コンサートがあった。コンサートが始まったのは51年。当時はまだ街の至る所にがれきが散在し、戦禍が色濃く残っていた。犠牲者を追悼するため、管弦楽団の首席指揮者だったルドルフ・ケンペの指揮で、イタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの「レクイエム」が演奏された。
 終了後、爆撃から九死に一生を得た聴衆の多くが感涙に打ち震えたという。その後も歴代の首席指揮者により、この伝統は受け継がれてきた。
 ちなみに、このコンサートでは、聴衆は演奏の前後に拍手をしない。終了後に演奏者とともに黙とうした後、静かに退場するのが習わしとなっている。コンサートのプログラムにもそのことが記されている。
 ことしの追悼コンサートでは、2012年から首席指揮者を務めているクリスチャン・ティーレマンが指揮棒を振った。03年にブラームスの「レクイエム」を指揮して以降、このコンサートに登場するのは4回目だ。今回初めて、ヴェルディの「独唱者と合唱とオーケストラのための死者ミサ『レクイエム』」を指揮した。
 ささやくように始まった「永遠の安息を」は、魂を呼び覚ますかのような温かい演奏だった。続く「怒りの日」は力強くとどろくよう。「妙なるラッパ」では、合唱の声量が控えめになり、抑制の利いた演奏が続いた。
 この世が火によって裁かれた後の「絶えることのない光」では、ソプラノ独唱者が高音で歌い上げた。最後はソプラノ独唱者たちが「解き放ちたまえ」と繰り返し、会場はまるで死者がよみがえるような雰囲気に包まれた。(中田千穂子=ベルリン在住)

 なかた・ちほこ 広島市南区出身。声楽家、音楽評論家。1974年に東ドイツ文化庁の招きでベルリンに留学。ドイツ・ジャーナリスト協会会員。ベルリンを拠点に欧州で活動する。

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