リポーター発

トルコ

食も絆もパン店が結ぶ

2014/4/4
窯から料理を取り出すパン店の店員

窯から料理を取り出すパン店の店員

 昨年夏、念願だったトルコ南東部の都市アンタキヤへ行った。訪れたのには訳がある。出会うトルコ人のほとんどが「アンタキヤへ行ったのか? 食文化が豊かなので、ぜひ行きなさい!」と口にしていたからだ。
 アンタキヤはシリアと接する地域。トルコ人やユダヤ人、アルメニア人などさまざまな民族が暮らし、多彩な文化が混在する地域といわれている。
 私はわくわくしながらアンタキヤの街を散策した。しばらく歩いていると、シリンジェという地区に入り込んだ。細く複雑に入り組んだ古い小道が続く。奥へ進んで行くと、街角に精肉店があった。
 大きな包丁で肉をひく店員の姿を、客が立ったまま見つめている。話を聞くと、野菜を持ち込み、肉と合わせて料理してもらっているのだという。店員が、ひき肉とみじん切りにした野菜に調味料を加え、直径30センチ以上の平らなハンバーグのような形が完成した。
 店員からその食べ物を受け取ると、客は外へ出て行った。後を追うと、近くのパン店に入った。話し掛けると、「パン店には大きな窯があるから、お金を出して調理してもらうの。具材を用意すれば『カイタズ』というアンタキヤの名物パンも焼いてくれるのよ」と説明してくれた。
 地区内にはパン店や精肉店、食料品店があり、食べるものは大抵そろうという。精肉店に鍋を持参し、あらかじめ買っておいた野菜を肉やスパイスと合わせてもらう。さらにパン店で数時間かけて火を通してもらい、各家庭の食事の時間に間に合うように仕上げてもらうのだそうだ。
 トルコではオーブンを使った料理が多く、特にアンタキヤでは種類が豊富だ。客が食材をパン店に持ち込む姿は何度も目にした。パン店が各家庭の調理を補っている形だが、ただ料理をしているだけでなく、人と人とを結ぶ潤滑油のような役割を担っているように思えた。
 食を通じて助け合いの精神が息づいていることに驚くとともに、人と人とのつながりがしっかりと残っていることをうらやましく感じた。(岡崎伸也=コンヤ在住)

 おかざき・しんや 益田市出身。トルコ料理探求家。奈良大在学中、トルコに興味を持ち、研究を始める。2009年からトルコ全土を旅しながら、食文化を探求し続けている。現在インターネットなどで発信している。

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