リポーター発

トルコ

伝統の羊料理をがぶり

2014/5/19
ケッレを手にする店主

ケッレを手にする店主

 トルコ内陸部のシワスという街に行ったときのこと。知り合った若者たちが共同生活するアパートに泊めてもらった。「食について調べ物をしている」と話すと、「ぜひ食べさせたい料理がある」と誘われた。朝早く行かないと売り切れるらしく、翌朝の午前6時に起きて店へと急いだ。
 向かった先は、羊の頭部をオーブンで焼いた「ケッレ」という食べ物を出す食堂。店主が大きなオーブンから鉄製の箱を出し、ふたを開けると、30個ほど並んでいた。店主が「手でほぐしながら食べるとうまい」と勧めてくれた。
 トルコでは「肉と魚は、手を使って頭部から食べる」のが基本らしい。日本人が、タイやマグロの頭部を食べるのと似た感覚だ。かぶりつくと、さらにおいしく感じる。
 店主から興味深い話も聞いた。昔トルコでは、受刑者に毎日同じ食べ物だけを一定期間食べさせるという刑罰があったらしい。栄養バランスを崩すなどして死に至ることもあったというが、ある受刑者はケッレを選んで生き延びた。
 なぜか。ケッレをほぐしていくと脳や頰など五つの部位に分かれる。その受刑者は、味や栄養分が異なる部位を日替わりで食べたため、死を免れたのだという。私も部位を確認しながら食べてみた。
 ケッレを求めて客が次々に来店する。中には五つまとめて買う人も。職場で仲間と一緒に食べるのが楽しみなのだとか。友人の家では週末の朝、家族そろってケッレを食べるのが習慣だったそうだ。
 ただ、かつては毎日数百個が飛ぶように売れていたケッレも、現在は1日に70〜80個程度という。ファストフードの台頭で、伝統的な食べ物を口にする人が少なくなったそうだ。それでも専門店として店を続けているのは、ケッレが特別な存在として認められている証拠なのだろう。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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