リポーター発

トルコ

結婚式の定番 仕込み圧巻

2014/10/8
大鍋の火を管理する職人

大鍋の火を管理する職人

 トルコの黒海地方・チョルム県の中心部から北西へバスで1時間ほど行った場所にイスキリップという田舎町がある。米を使った、この地の伝統料理「イスキリップ・ドルマ」の存在を知り、早速訪れた。季節に関係なく作られる大鍋料理。トルコのブライダルシーズンに当たる夏場は、大勢の来客の空腹を満たすのに欠かせない料理という。
 私は8月末の週末に現地を訪れ、職人のタヒルさんたち3人に密着した。この料理の最大の特徴は鍋の仕掛けにある。鍋の底に脂身の少ない牛の部位を入れ、水を加える。そこに三脚の台を置き、バターで炒めたピラフを詰めた布袋を載せる。鍋にふたをして、小麦の生地で隙間をしっかり閉じてから火を入れる。ふたにある小さな穴から蒸気が出る仕組みで、圧力鍋を使ったときのように牛肉が軟らかくなる。ピラフに蒸気を当てることで、肉のうま味が移るという。
 現地では、夏場は毎週のように結婚式があり、私が訪れた日も数カ所で営まれていた。そのため、職人は一日に何件も掛け持ちしなければならない。結婚式の規模によっては、一度に10個の鍋を使って千人分を用意することもある。ずらりと並んだ大鍋で12時間じっくり蒸し上げる様子は圧巻だ。職人は火を絶やさないよう、朝まで交代で火の管理をする。
 数百年以上前から作られている伝統料理で、オスマン時代に、皇帝や兵士たちをもてなしたところ、たいそう気に入ったそうだ。その後、宮廷料理となり、イスキリップの料理となって引き継がれている。
 料理が完成してふたを開けると、一気に蒸気が噴き出した。ピラフから湯気を逃がすため、混ぜてパラパラの食感にする。その上にスープを垂らし、裂いた肉を載せる。テーブルに運ばれると、招待客たちが一斉にスプーンを伸ばす。ブドウ酢の効いたヨーグルトスープを一緒に口にすると、更に食欲が進んで食べるペースも上がる。
 味が気に入った招待客はチップを入れて皿を返し、おかわりを求める。昔と変わらない圧巻の仕込みと、招待客の豪快な食べっぷりが印象的なイスキリップへの旅だった。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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