リポーター発

トルコ

煮込みケバブ 職人の技

2014/12/12
割ったテスティからケバブを取り出す職人

割ったテスティからケバブを取り出す職人

 トルコ内陸部を旅した際、ヨズガット県の名物テスティ・ケバブを食べた。ケバブはトルコで肉料理の総称。テスティは「素焼きの水差し」を意味する。一見関係のなさそうな肉料理と水差し。一説では、肉や野菜を持ってピクニックに行った人が、鍋を忘れてしまったため、水差しで代用して食材を煮て食べたのが始まりとされる。想像以上においしかったため、150年以上にわたって食べ続けられているという。
 訪れた店の店主シュクルさんは、この道50年のベテラン。早朝からの調理に備え、前日の夕方に仕込みを始めた。まず、食べやすいように子羊の肉を小さく切る。トマトやタマネギ、ニンニクも刻み、黒こしょうや赤唐辛子、タイム、塩を混ぜ合わせる。材料を水差しに入れ、バターとトマトソース、水を加え、アルミ箔(はく)で覆ってから小さな穴を開けた。本来は小麦の生地で覆うらしい。
 翌朝、再び店を訪れた。まず、ステンレスの台の上で炭をおこして広げ、具材を入れた水差しを置いて加熱。しばらくすると蒸気が出始める。4時間もたつと食材は軟らかくなる。完成後に水差しを石で割り、ふたを開けると一帯に蒸気が立ちこめる。土製なので熱が伝わりやすく、煮込みに適している。
 出来たては、子羊のうまみとスパイスの香りが際立つ。時間がたつと、肉の原形がなくなるほどとろとろに。ピラフと一緒に食べると食が進む。シュクルさんは「火加減の難しい料理。弱いと生煮えになり、強すぎると水差しが割れてしまう」と話す。
 ひょんなことから生まれた調理方法が職人の手で受け継がれ、名物料理として愛されている。ヨズガット県では、食堂で食べられるだけでなく、水差しを持ってピクニックに出掛けて楽しむ人もいるそうだ。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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