リポーター発

トルコ

猟師スープ 囲む男たち

2015/1/26

 トルコのアジア側、中央アナトリア地方を旅している際、「アラバシュ」という郷土料理の名を聞くことが度々あった。この地方では昔、野生の鳥や動物を狩る習慣があり、アラバシュとは、ヤマウズラやウサギの肉で作るスープのことを指すのだという。いわゆる冬の猟師スープである。
 現在ではそれらの肉を確保できないので、家庭や食堂では鶏肉を使うのが一般的だが、珍しくウサギが手に入ったので、それで作ることになった。
 作り方は小麦粉と水、塩を少量加えて火を入れる。だまにならないように混ぜてペースト状に。大きい気泡が出始めたら盆に流し、冷やして固める。その間、肉を丸ごと圧力鍋に入れ、タマネギと黒こしょうを入れてスープを作る。出来上がったら肉を骨からほぐし、繊維状に裂いておく。
 鍋にバターを溶かし、小麦粉を足してきつね色に炒め、トマトペーストと辛みペーストを加えた後によく混ぜる。スープを加え、混ざったらほぐした肉を加える。最後に塩、赤唐辛子、黒こしょうで仕上げる。
 この料理は食べるというより流し込むといったほうが正しいかもしれない。なので、小麦のペーストをごま豆腐のようなもちもちとした触感にしないと、喉越しが良くないのだ。
 このスープは5、6人で囲んで食べるのが通例。冬の時季、狩りから帰った男性陣が肉でスープを作ってもらい、冷えた体を温めながら狩りの話で盛り上がるのだそうだ。一回り大きい木製スプーンで小麦粉の生地をすくい、熱々のスープに浸して食べる。生地を喉に流し込む際、ごくっと音が出るほど勢いよくのみ込む。何杯もお代わりするうち、体が熱くなる。まさに男の食事そのものだ。
 生地をスープに浸す際に器の中に落ちてしまったら粗相。その場で「次にアラバシュを作ってもてなすのはおまえだぞ」と言われるのだ。もちろん冗談だが、一般的な小話として知られている。
 一つの食事を大勢で囲んで食べるのは、おいしさを分かち合うこと。みんなとアラバシュを食べ、そう感じた。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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