リポーター発

トルコ

食卓潤す野草 移民の味

2015/2/10

 昨年12月下旬、トルコ南部のアンタルヤを訪れた。地中海地方の代表的なリゾート地。内陸の乾燥した冷たい気候とは一変し、オレンジやバナナも育つ。オフシーズンにもかかわらず、十分すぎるほど暖かかった。この地の食文化を調べるため、隣国のギリシャで最大の島・クレタ島からの移民者でつくる協会を紹介してもらった。
 クレタ島からの移民者は「ギリットリ」と呼ばれる。オスマン帝国が島を支配した1669年以降、多くのトルコ人が移り住み、帝国の衰退とともに本土に戻った歴史がある。
 彼らは、野草を食べる文化を島から持ち帰った。植物の種類が豊富な地中海地域で、野草を食べることは地の利を生かした文化だといえる。旬の野菜や香草を刻んでサラダにしたり、ゆでてからニンニクやレモンと混ぜたオリーブ油をかけたり…。脂身の少ない子ヤギの肉と組み合わせた料理が代表的だ。
 しかし、これらの料理は本土に持ち込まれた当時、大衆に受け入れられなかった。「野草と混ぜるなんて、肉がかわいそう」とまで言われたそうだ。今では「野草は臓器に優しく、病気予防にもなる」と価値観が理解され、市場で競って買い求めるほど重宝されている。
 同協会で秘書を務めているアレブさんは移民4世に当たる。彼女の曽祖母は1897年、クレタ島からトルコに渡り、沿岸を転々とした後、アンタルヤに定住したという。家に招かれ、手作りの料理でもてなしてもらった。
 食卓には、市場で仕入れた「アラサプチ」と呼ばれる野生のフェンネルを、白インゲン豆とトマト、子ヤギの骨付き肉とそれぞれ煮込んだ料理が並んだ。白インゲン豆のトマト煮込みはトルコの国民食だ。香草が味を邪魔してしまうのではないかと思ったが、煮込むと上品な香りに落ち着いた。彼女の腕もあるが、手品のような激変ぶりに驚いた。
 「自然に生えている野草は、レモン水や酢水でしっかりと洗う必要があるのよ。大変だけど、それさえきちんとしておいたら調理は簡単なの」とアレブさんはほほ笑んだ。
 冬の市場には、オトゥジュと呼ばれる野草だけを扱っている露店もあった。春にはさらに種類も増えるという。食卓から野草が途切れることは、まずないだろう。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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