リポーター発

イギリス

イギリス・地下鉄が遅れても焦らず

2015/6/15

 ロンドンは世界で初めて地下鉄が開通した都市であり、その歴史は150年を超える。それゆえ、車両が小さく、窮屈そうに乗っている男性も少なくない。しかし、朝夕の通勤ラッシュ時でも、日本の満員電車で経験する、人々のいら立ちを感じたことがないから不思議だ。
 例えば、車内で老人や妊婦を見掛け、席を譲ろうと思った瞬間に、近くの誰かがすでに気持ちよく席を空けている。また、バリアフリー化が十分整っていないため、狭い階段を上下しなければいけない駅も多いが、スーツケースなどの大きな荷物を持っていると、周りの誰かが必ず手助けしてくれる。
 もちろん、レディーファーストが染み付いているなど、文化的背景の違いもあるだろうが、人々から感じられる余裕は、無駄なプレッシャーやストレスが日常生活に少ないことも関係しているのではないだろうか。
 実際、通勤に関していえば、絶対に遅刻できない、休めない状況を課せられている人は少ないと思う。なぜなら、地下鉄は遅延はもちろん、乗っている最中でさえ、突然行き先が変わることがある。運休や、利用しようと思った駅が閉まることもよくあり、「電車が遅れたから」は堂々とした遅刻の理由になる。
 「絶対にこの電車に乗らなければ駄目」という焦りがないから、混んでいる電車を見送る人も多い。ストライキも年に1、2回は決行され、その場合は「地下鉄のストライキがあるので会社を休みます」と言うこともできる。会社ごと休みにするケースもあるらしい。
 地下鉄の空気を和ます一因として、「バスカー」と呼ばれる音楽演奏者の存在もあるかもしれない。駅の中に公認の演奏スペースがあり、ここでお金を稼ぐことができるのだが、この演奏許可を得るには厳しいオーディションを勝ち抜かなければならないそうだ。実際、素晴らしい演奏が多く、本気で感動してしまうほど。これもロンドンの地下鉄が好きな理由である。
 ただ、残念なことに、私の最寄り駅は間もなく、たった2基のエレベーターを交換するために、何と9カ月間も閉鎖される。これにはさすがに閉口してしまったが、イギリス人の寛大さを見習って、心に余裕を持ちたいと思う。(浜家尚美=ロンドン在住)


この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧