リポーター発

イギリス

英国・家の歴史刻む青い銘板

2015/10/6

 英国の町を歩いていると、建物の外壁に埋め込まれた青いプレートを目にすることがある。ブループラークと呼ばれ、著名人や重要な出来事にゆかりのある建物であることを示すために設置されている。プラークには、名前や職業、住んでいた時期などが記される。設けられた時期や団体によってデザインが異なるので青以外もある。
 英国の文化的歴史は長い。古い建物が多く残っているので、列挙するときりがないほど。シェークスピアから、元ビートルズのジョン・レノンまで、英国ゆかりの多くの人物が、かつてそこに暮らしていたことを知ることができる。
 ベイカーストリートには、架空の人物ながら、名探偵シャーロック・ホームズのプレートがある。そしてもちろん、著者コナン・ドイルの住んでいた家にも。また、バロック音楽を代表する作曲家ヘンデルと、1960年代のロックミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスの住んでいた建物は隣り合っている。時代とジャンルを超えた2人の偉大な音楽家のブループラークが並んでいる図は見ていて面白い。
 日本人で唯一ブループラークが設置されているのが明治、大正期の文豪、夏目漱石である。文部省(現文部科学省)から英国留学を命じられた漱石は、1900年から02年の2年間ロンドンで暮らした。5回変えた下宿先のうち、最後に暮らしたロンドン南部の家の外壁にプラークが掲げられている。もっとも、当の漱石は、自著「文学論」の中で留学時代を振り返り、「ロンドンに住み暮らしたる二年は尤(もっと)も不愉快の二年なり」と残しているので、設置を喜んでいるかは分からない。
 その向かいにある「ロンドン漱石記念館」では、当時、漱石がどのような暮らしぶりをしていたかを垣間見ることができる。ロンドンの物価高や異国における居心地の悪さなど、中には思わず共感する部分もあり、大変興味深かった。
 普段の生活では何げなく見過ごしがちだが、思いがけない人物の足跡をたどり、歴史の流れに思いをはせることのできるプラーク。注目して歩くと、街が一層魅力的になってくる。英国を訪れたときは、ぜひ、それらを巡る時間をつくってはいかがだろうか。(浜家尚美=ロンドン在住)


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