リポーター発

トルコ

トルコ・脂乗った黒海のイワシ

2016/1/23

 トルコ北部の黒海沿岸を旅するときに、必ず食べたい一品がある。「ハムスィ」と呼ばれるカタクチイワシがそれだ。トルコで、黒海の魚が何かと聞かれれば、だれもがハムスィと答える。体長12センチ程度の小さなイワシだが、一度食べ始めるとやみつきになる。このほど、東部にある黒海に面した最大の街トラブゾンでその味に触れた。
 漁は9月から解禁となり、海水が冷たくなり始めた10月中旬からたくさん捕れ始める。春までが旬の魚だ。ここで取れるハムスィについて、地元の人は「トルコ西部やイスタンブールで捕れるものと異なり、味に違いがある」と自慢する。寒ければ寒いほど、ハムスィが体に脂分を蓄えて味がよくなっていくからだそう。トルコの中でも、寒い地である黒海東部のハムスィこそ最高の魚と、みんな胸を張る。
 それにしても、鮮魚店がトラックから箱を積み下ろして、店頭にびっしりと魚を並べる光景は圧巻だ。売り子が「どうぞ、いらっしゃい」「ことしのハムスィが入ってきたよ」「やっとハムスィの季節到来だよ」と街中はにぎやかである。お客も、待ってましたとばかりに店頭へと集まってくる。
 店頭に立つ売り子はここからが腕の見せどころ。箱に入ったハムスィを1匹取り上げ、真っ赤なエラを人さし指で引き出してみせる。新鮮さをアピールするためだ。エラを出すと、大きな口が開くのだが、それを何匹も並べると、合唱しているかのようで、とても滑稽で愛らしい。
 1キロで12トルコリラ(約600円)するが、みんな今晩のおかずはこれで決まりとばかりに、数キロ買い求めて家路に就く。脂が乗っている今頃は網焼きをして、余計な脂分を落として食べるのがお薦め。これをパンにはさんだり、クレソンや青ネギを添えたりしていただくのが一般的だ。
 食卓の真ん中に置いてあるハムスィにみんなの手が一斉に伸びて、無口でほおばる姿を何度見たことだろう。さまざまな料理に使われ、食卓でも欠かせない食材のハムスィ。夏用にと塩漬けの保存もこれから始まる。寒さが一段と増すこれから、さらにこの街は活気づいていく。(岡崎伸也=コンヤ在住)

鮮魚店の軒先には新鮮なハムスィが大量に並ぶ。大売り出しの声にどんどんお客が集まってくる 

鮮魚店の軒先には新鮮なハムスィが大量に並ぶ。大売り出しの声にどんどんお客が集まってくる 

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