リポーター発

トルコ

トルコ・コーヒー 小鍋で煮出す

2016/4/12

 世界に知られるトルココーヒーだが、オスマン帝国と深い関わりがあることを知る人は意外と少ないのではないだろうか。コーヒーはアフリカのエチオピアが原産で、その後、対岸のアラビア半島のイエメンに伝わった。当時はイスラムの神秘主義の修行僧が覚醒を促す秘薬だったとされる。
 オスマン帝国の皇帝に献上されたのが1543年ごろ。それをきっかけに人が集う社交の場で出されるようになった。皆さんは、カフェ(喫茶)文化の始まりは、欧州と思うかもしれないが、実はコーヒーが飲み物として定着し、カフェ文化として開花したのは、イスタンブールなのである。
 イスタンブールの旧市街に世界で初めてのコーヒーショップが開店し、会話をつなぐ潤滑油としての存在を確立した。その後、欧州各国へ伝わり、一気に普及。男たちの待ち合わせや、おしゃべりの場に欠かせない、ゆっくりと長い時間を過ごす友になった。
 コーヒーの入れ方自体は煮出し方式で手法としては最も古風だ。いった豆を砂のように細かく石臼でひいたものをジェズベと呼ばれる小鍋で煮出す。いり立て、ひきたての新鮮なものだけを使い、香りや味、色を移していくために火はじっくりと弱火。ジェズベの中に水と粉、好みで砂糖を入れて火にかける。
 泡が立ちあふれそうになったら、火から下ろしてカップに分ける。注いだら、粉がカップの底に沈殿するのを待って、その上澄みだけをいただく。エスプレッソほどの味や香りや刺激はないが、やさしくマイルドで実に飲みやすい。
 店では熾(おき)火やガス、焼き砂の上で作るのが一般的である。一方、家庭では最近電化が進み、専用のジェズベに粉と水だけ入れて機械に装着すれば、十分おいしいコーヒーが簡単にできるようになった。急な来客でも手間がかからず、おもてなしができる。時代の流れを実感する。
 またカップをひっくり返し、底に沈んだ粉の模様から運勢を見るコーヒー占いもある。トルコでは、人生において、「占いを信じてはいけないが、占いなしの人生もつまらない」という言い回しがあるほどで、特に女性たちは日常でも楽しんでいるようだ。
 現代のトルコでは、国民的な飲み物といえば「チャイ」が思い浮かぶだろう。ただ、コーヒーは、おもてなしの際の飲み物として今も健在だ。トルコでは、婚約を申し出るため、男性が親と女性の家に出向く。そして女性は男性の家族にコーヒーを入れる。うまく入れられるかで、花嫁としての技量が問われるという。
 このように、トルココーヒーは、チャイのように食事に必要というよりも、人生の場面を豊かにしてくれる存在であるように思う。そのトルココーヒーは2013年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。時には、オスマントルコと関わってきた歴史に思いをはせながら、1杯をいただくのもいいかもしれない。(岡崎伸也=コンヤ在住)

お店では泡の立ったトルココーヒーが入れられる。煮出し式なので砂糖の甘さはあらかじめ伝えておく 

お店では泡の立ったトルココーヒーが入れられる。煮出し式なので砂糖の甘さはあらかじめ伝えておく 

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