リポーター発

トルコ

トルコ・苦みが爽快感 夏の飲料

2016/7/5
シェルベットは最初苦いが、慣れると爽快な味になるから不思議だ

シェルベットは最初苦いが、慣れると爽快な味になるから不思議だ

 トルコ南部のカハラマンマラシュを6月に訪れた時、街中で何やら変わった服装をしたおじさんと出会った。背中に大きな水筒を背負っている。人の気を引くためだろうか、手で2枚のステンレスカップをすり合わせて、ジャラジャラと打ち鳴らしながら歩いている。
 彼が街の広場近くに着くと、徐々にお客が集まって来た。水筒につながった長いホースの先から黒い液体がコップに注がれている。一体何だろうと、気になったので、集まっていた人に尋ねてみた。すぐに「シェルベット」という答えが返ってきた。
 シェルベットはオスマン帝国時代、お酒が禁止されているイスラム教の食文化にあって、それに変わる冷たい甘味飲料として進化した。材料はスモモやイチゴ、チェリー、タマリンド、バラなど多種にわたり、砂糖と水、スパイスで煮出し、漉(こ)して冷ますのが一般的だ。
 彼が売っているのは、メヤンというマメ科の植物の根からエキスを抽出したものらしい。メヤンとは春の時季、主にこの辺りの山間部に自生している甘草である。メヤンの根をきれいに洗い、20センチ程度に切ってから乾燥させる。それを木づちで繊維状になるようにたたく。水をふりかけ、しっかりともみ込んだ後、2時間水に浸たす。
 この原液(マヤ)は濃い茶色をしており、薄めて提供される。1杯1トルコリラ(約50円)なので早速試してみた。液体が泡立ててあるのは、苦みを取り払うためという。一気に飲み干すと、初めはうがい薬のような香りがしたが、少しの苦みの後、ほんのりとした甘さが口の中に広がった。一瞬の薬臭さを我慢すれば爽快感を味わえそうだ。
 ラマダン(断食月)には、断食明けのイフタル(夕食)でよく飲まれるし、サフルという日の出前の食事では、これを飲んで1日の喉の渇きを抑えるそうである。
 さらに喉や胃炎、肝臓、利尿作用の効能があるそうだ。「継続的に飲まないと効き目はないよ。ちなみに、俺はよく通っていただくけどね」と、あれこれ説明してくれた常連客のおじさんは自慢げだった。ただ飲み過ぎは、高血圧や糖尿病の持病がある人や妊婦の場合、有害になることもあるので注意したい。
 シェルベットが売られる姿は、南東部では夏の風物詩としてすっかり定着している。冬になると、彼らはサーレップという温かい飲み物に商売替えする。夏には体の熱を取り、冬には体を温めてくれる1杯を―。掛け声を響かせながら、今日も完売するまで売り歩くのである。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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