リポーター発

イギリス

英国・明確な青写真なくEUからの離脱を選択

2016/7/11
観光客たちでにぎわう国会議事堂前。EUからの離脱が決まった後もいつもと変わらぬ光景が続く

観光客たちでにぎわう国会議事堂前。EUからの離脱が決まった後もいつもと変わらぬ光景が続く

 英国は6月23日の国民投票でまさかの欧州連合(EU)からの離脱を選択した。首相経験者が残留を呼び掛けたスコットランドと北アイルランドでは、その効果があったのか、残留派が多数を占めたが、肝心のイングランドが大きく離脱にかじを切ってしまった。
 大手調査会社によると、都市部のほとんどは残留を選んだが、そのほかの特に田舎の大半では離脱を選択したようだ。年代別では65歳以上の61%が離脱に投票したが、18〜24歳は残留が75%を占めた。世代間の違いがくっきりと出た。
 高齢者が離脱を選んだのは、年金や国民医療制度(NHS)など、福祉の権利を保持したかったからであろう。EUから離脱して浮く年間180億ポンド(日本円で約2兆4500億円)の加盟金を福祉に振り分けるという離脱派の政策が魅力だったのではないか。近年の移民の増加による治安悪化への懸念もあっただろう。
 国民投票の結果を受け、残留派の主導者であるキャメロン首相は辞意を表明したが、10月までは首相として任に当たる。そして、今注目されるのがキャメロン首相に代わって、だれが与党保守党の党首になるのかということである。党首イコール首相だからだ。
 EUからの離脱が決まった時は、離脱派のリーダーで次期首相の最有力候補とされたボリス・ジョンソン前ロンドン市長が「次の首相は私だ」と豪語していた。しかし後に、党首選に出ないと態度を一変させた。国民の多くが驚いたに違いない。
 また、独立の機運が再び高まっているスコットランドが本当に英国から離脱した場合、英国は経済的にも崖っぷちに立たされるだろう。既に危機感を募らせる若者たちを中心に国民投票やり直しの声も出ている。
 英国はEUから離脱後、新たな移民を受け入れないことになる。だが現在いる移民の今後はどうなるのか。そんな説明は離脱派からもなかったし、考えれば考えるほど、離脱によって政策的に無理が生じてくるような気がしてならない。
 サッカー界への影響も出そうだ。イングランド・プレミアリーグは世界で最も経済的な原則、つまりお金が飛び交うリーグである。これまでは、EU圏内の選手であれば自由に移籍できたが、今後はビザが必要となる。南米の選手がスペインやポルトガルの国籍を取った後、英国へ来るという裏技も使えなくなる。
 インド人、パキスタン人、中国人だけで英国への移民は400万人以上いるという。最近ではポーランド人が100万人超の勢いで増えている。ただ労働力を移民に頼り、彼らなしでは成り立たない職種があるのも事実。明確な青写真がないまま、英国がEUからの離脱を決めてしまったことだけは間違いない。(渋谷英秋=ロンドン在住)

この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧