リポーター発

イギリス

英国・首相官邸のネズミ捕り長 ラリーは公務員

2016/8/6
厳重な警備態勢の首相官邸だがラリーは出入り自由だ

厳重な警備態勢の首相官邸だがラリーは出入り自由だ

 世界をあっと驚かせた英国の欧州連合(EU)からの離脱。可否を決めたあの国民投票から、はや1カ月が過ぎた。首相交代や新体制の発足に、英国の政界は慌ただしい日々だった。離脱の結果を受けて辞任した残留派のキャメロン前首相の後を継いだのは内相だったテリーザ・メイ氏。「鉄の女」の異名で知られた故サッチャー氏に次いで2人目の女性首相の誕生となった。
 そんな首相交代劇の裏で、小さなニュースが報じられた。ダウニング街10番地にある首相官邸に勤務するネズミ捕り長のオスネコ「ラリー」の残留だ。ラリーはあくまで首相官邸に属する公務員。キャメロン家のペットではないので、キャメロン氏が官邸を去ろうとも、残留して職務を続けるということであった。
 キャメロン氏の対応も面白かった。首相としての最後の質疑応答で、「ラリーを愛していないとのうわさがあるが、そんなことはない」とラリーを膝に乗せた写真を証拠として披露する芸の細かさだった。実に英国らしいウイットに富んだ話だと思う。
 政治の中心地でネズミを捕るため、ネコを飼うこの慣習、意外やその歴史は古いそうである。調べてみると、16世紀の国王ヘンリー8世の時代までさかのぼるという。
 現在でも、英国ではネズミによる被害が身近な問題としてよく話題になる。キッチンの食糧をかじられるのは決して珍しいことではないし、私自身、以前住んでいた家でネズミに遭遇し、格闘した経験がある。深夜の地下鉄のホームで、ネズミが縦横無尽に走り回る姿を目にすることも多い。
 ネズミ捕りのネコといえば、スコットランドの「ウイスキーキャット」もつとに有名だ。スコッチウイスキーの蒸留所では、原料の穀物がネズミに食い荒らされることが少なくなかった。そのため、ネズミ対策としてネコが多く飼われていた。
 現在では、施設の近代化が進んだこともあり、ネズミの害も減ってきた。今いるネコはマスコット的な意味合いが強くなったが、ラベルにネコが描かれているウイスキーもあり、今でも深い関係をしのばせる。
 ちなみに、メイ首相が暮らすダウニング街は通りの入り口に鉄柵が張り巡らされ、警察官が時間厳重に警備している。世界中でテロが相次ぐ中、官邸が標的にならないとも限らず、当然の態勢だろう。
 そんな厳重警備をものともせず、自由気ままに行ったり、来たりしているのが、われらがラリーなのだ。ネコ好きの私としては、いつか官邸周辺で、くつろぐネズミ捕り長に遭遇してみたい。そんな小さな願いを抱いている。(浜家尚美=ロンドン在住)

この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧