リポーター発

トルコ

トルコ・かき氷 昔の記憶を刺激

2016/8/29
サワーチェリーのシェルベットに氷を入れる男性

サワーチェリーのシェルベットに氷を入れる男性

 夏真っ盛りの8月上旬、エーゲ海地方のデニズリ県のブルダンを訪れた。町中を散策していると、結婚式が開かれているところに出くわした。会場のそばを通ると、中へと案内され、食事もいただくことになった。トルコでは、多くの人に祝ってもらうのはありがたいこととされ、招待客の数もかなり適当。そういうこともあり、私のような経験をするのは珍しいことではない。
 特に外国人だと、「まあ、ちょっと寄っていきなさいな」というノリで招かれることになる。食事をいただいた後、会場の外へ出ると、かき氷が出席者に振る舞われていた。結婚式の主催者が、幸せをみんなで分かち合うために、業者に数百人分のかき氷を注文し、無料で配っているのだという。
 早速、サクランボのシロップが入ったコップにかき氷を入れてもらい、スプーンで崩しながらすくって食べる。炎天下、実においしい。業者は、大きな布袋いっぱいにある氷を削ってはコップに手際よく盛っていく。この氷は、冬に天然の雪を袋に圧縮し、夏が来るまで地下にうずめて保存したものだそうだ。
 このやり方は、メソポタミア文明の頃から続くそう。冷蔵庫のない時代、この方法で食材が腐らないよう保存していたそうである。当然、雪は冬の時季に蓄えておくのだが、注意事項があるという。初雪を食べると風邪をひいたり、おなかを壊したりするので、シーズン初めの1、2回目の雪は集めず、3回目から集めるといいそうである。
 夏場に果実を搾り、加工して作ったシェルベットというジュースや、ドライフルーツを煮だして、その汁を飲むホシャッフは、オスマン帝国時代に宮廷で花咲いた飲み物だった。それを冷やすために氷は不可欠であり、首都イスタンブールから船で2時間ほど行ったマルマラ海沿いの古都ブルサから運ばれていたという。そこにあるウルダー(大山)が雪や氷の採掘場所で、都まで船便でヤギの毛で作ったフェルトに包んで輸送していたと伝わる。
 家庭でも同じように、麦わら、フェルトやキリムという織物に包んで温度が低い洞窟や地下に保存していた。夏になると、ブドウの果汁を煮詰めたペクメズと呼ばれる濃縮液をかき氷の上にかけて、食後によく食べていたそうだ。
 業者が商売用に雪を保管して、結婚式などで実演するのはイベント的な意味合いが強いとはいえ、昔ながらの方法で作られているかき氷。年配の人に懐かしさを、若者には珍しさを感じさせるようだった。トルコ人に宿るいにしえの記憶を刺激する一品であることだけは間違いなさそうである。(岡崎伸也=アンタルヤ在住)

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