リポーター発

トルコ

トルコ・クスクス 先祖伝来の味

2016/10/5
2種類のふるいを使ってだまの大きさを均一にするギュルンセルさん

2種類のふるいを使ってだまの大きさを均一にするギュルンセルさん

 トルコの欧州側に位置するトラキア地方の都市エディルネへやって 来た。この地方には、第1次世界大戦後の1923年、 トルコとギリシャが「住民交換」をし、 旧オスマン領だったバルカン半島やブルガリア、 ギリシャから多くのトルコ系、 イスラム系の人たちが移住してきた。
 この辺りでは、ある食材をよく目にする。東地中海発祥ともいわれる小麦で作られたパスタの一種「クスクス」だ。作り方や食べ方は地域で違うが、トラキア地方では、小さなビーズ大にした粒をゆでて食べる。
 興味があったので、エディルネ郊外の通称土曜日市場を訪れた。自家製の商品を売りにくる村のご夫人たちが多いので有名な市だ。そこでクスクス以外に、手打ち麺も売るギュルンセルさんと知り合いになった。意気投合し、自宅でのクスクス作りを見せてくれることになった。
 2日後、市内からバスで30分程の彼女が住むタヤカドゥン村を訪れた。聞くと、彼女の村の祖先も100年以上前、昔のオスマン帝国領のギリシャのテッサロニキから移住してきた人たちという。クスクスはまさに先祖伝来の味なのだ。
 クスクスはブナの木を彫ったテクネというおけのようなもので作る。作業中にずれないよう、ずっしりと重い。イルミックと呼ばれるセモリナ粉に、卵と牛乳、塩を混ぜた液体を振り掛けたものが食材。合間につなぎの小麦粉も足す。
 テクネの中で、楕円(だえん)を描くように、右から左へとイルミックをリズミカルにもみ込み、だまを大きくする。最初は砂粒のような大きさのイルミックが次第に大きくなる。網の目が違うふるいにかけ、だまの大きさを均一にする。完成品は3ミリほど。天日で乾かす。クスクスは冬の保存食の一つで9月ごろからこうした作業が各家庭で見られるという。
 乾燥させたものも、もちろんおいしいが、ギュルンセルさんによると「生のクスクスはまた格別の味」とのこと。彼女が出来たてをごちそうしてくれることになった。ゆで上がりとともにクスクスが水分を吸い始め、膨らみ始める。途中、お湯をこすことは絶対にしない。この水分においしさとうま味があるから、捨てないのだそうだ。
 作り方はシンプル。フライパンにバターを熱し、ちぎって炒めたパンに、ゆでたてのクスクスを混ぜ合わせて完成。塩かゆに近いが米と違って、食感は「もっちり、つるつる」。塩味とバターの甘さ、パンの香ばしさもアクセントになり、あっさりしている。
 20歳の時からクスクスを作っているというギュルンセルさんが誇らしげに言う。「既製品よりいい食材を使っているし、工程も丁寧。違いは明らかよ」。手間をかけて作るクスクスを目の前で見て、その場で味わうことができたのはとても貴重な経験だった。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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