リポーター発

トルコ

トルコ・野菜練り発酵 スープに

2016/10/21
タルハナの生地をこね、発酵と熟成を促すアイスンさん

タルハナの生地をこね、発酵と熟成を促すアイスンさん

 前回に続いて、トルコの欧州側に位置するトラキア地方の都市エディルネの話である。訪れた9月中旬は、ちょうどタルハナと呼ばれる保存食を作る最盛期だった。
 タルハナは2種類ある。一つは中央アナトリア地方や東部などで作られる小麦粉とヨーグルトを煮て、おにぎり状や平らにした後、乾燥させたタイプ。そして欧州側のトラキア地方で作られる小麦粉とヨーグルトにトマトや玉ねぎなどの野菜を練り合わせ、小さくちぎって乾かしたものである。
 今回、知り合いのアイスンさんにタルハナ作りの過程を見せてもらった。材料は赤ピーマン、トマト、玉ねぎ、ヨーグルト、セモリナ粉、塩、トマトペースト、酵母と小麦粉。野菜を細かくして、一度鍋で火を通して水分を飛ばす。冷ました後、たらいに残りの食材を加えて一緒に混ぜ合わせてこねる。
 ただ、「このタルハナは1日にしてならず」である。すべての食材を混ぜた後、日本のみそや漬物のように8〜15日間、毎日15分ほど生地を混ぜ、発酵を促す必要があるからだ。始めの数日間は、毎日発酵が進むのでたらいの中の生地が膨れ上がる。
 8日以上毎日続けることで味も熟成し、酸味も出てくるという。逆にしっかり熟成させないと、材料が一体化せず粉っぽさが残る味となり、タルハナ本来のおいしさが堪能できないそうだ。生地は小さくちぎって布の上に並べて乾燥させる。完全に乾燥すれば溶けやすいように粒状にして瓶の中で保存する。
 アイスンさんによると、50年前は、パンやサラダ、チーズ、バター、卵、紅茶などを食べる西洋式の朝食は高価だったという。そのため、代替食はスープが一般的で「タルハナを入れたスープこそが、その代表的なものだったのよ」と教えてくれた。アイスンさんは実母が他界した後、自分でも作れるようになろうと、親戚から改めて作り方を教わったという。
 村の生活から、街のアパート暮らしが急速に進んでいるトルコ。タルハナは時間も手間もかかる保存食なので若者はほとんど作らず、マーケットで既製品を買うのがほとんどという。アイスンさんは「私がいずれいなくなっても、タルハナだけは娘や孫に自分で作って食べてほしいわ」と語った。
 ビタミンも豊富で、特に風邪をひいたときには効果てきめんだ。トルコにはかなり多種のスープがあるが、保存食である即席スープといえばこのタルハナなのだ。保存食の中でも別格の存在であり、ここエディルネでは、タルハナへの思いはまた格別のようだ。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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