リポーター発

アメリカ

米国・大統領令に混乱広がる

2017/2/8
首都ワシントンにあるホワイトハウス。あるじのトランプ大統領は米国の分断を避けることができるだろうか 

首都ワシントンにあるホワイトハウス。あるじのトランプ大統領は米国の分断を避けることができるだろうか 

 軍歴も行政経験もゼロのトランプ氏の米国大統領就任演説を生中継で見たのは先月20日のこと。いよいよ、トランプ大統領による米国のかじ取りが始まった。ただ、最初の1週間に見せた「異次元の手法」はさまざまな波紋を呼んだ。
 就任早々、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを発表した。素早い行動力を見せた一方、就任式や大統領選に関し「観衆の数はメディアがうその情報を流した」「500万人の不法移民がクリントン氏に投票した」などと主張したため、大統領としての思慮に欠ける、情緒不安定―などと非難された。その後もメキシコとの国境に壁を建設する費用のため、対メキシコの関税を20%に引き上げることを検討中と明らかにした。
 気になったのが就任演説で語った「無駄話の時間は終わった。これからは行動する時だ」という発言である。ビジネス業界では有言実行のスピードが問われ、トライアル・アンド・エラーが重要視されるのだろうが、政治の世界での朝令暮改は混乱を招きかねない。
 それは、先日発令された、イスラム圏7カ国からの入国禁止や難民受け入れを凍結するという大統領令がもたらした混乱ぶりを見れば明らかだ。米国永住権(グリーンカード)の取得者でさえ、該当国からの移民という理由で再入国が制限された。
 全米の主要空港や各地で大規模な抗議デモが起こり、社会は混沌(こんとん)としている。大統領令に反対した司法省トップでオバマ前政権から残るイエーツ司法長官代行が解任され、さらに混乱に拍車を掛けている。
 トランプ大統領に投票した支持者に政権発足後の感想を聞いた。彼らは「成績は(5段階評価で最上位の)A。米国人であることをとても誇りに思う」「入国者を厳しく審査するのは評価できる。イスラム教徒が嫌いだからではなく、私たちの生活を脅かすと感じる存在だから」と言う。
 メキシコとの国境に壁を造る建設費を負担することになっても「家族を守るためならいとわない」と力を込める。ちなみに建設費用は120億〜150億ドル(約1兆3600億〜1兆7千億円)と推計される。
 最高裁判事もトランプ大統領が推薦する保守派の人物に決まった。今後、中絶問題や同性愛などの議論に影響が出る可能性が高い。さらに医療保険制度改革(オバマケア)撤廃、中国からの輸入品に45%を課税するなどの公約は、本当に実行されるのだろうか。
 米国では、深刻な対立に発展しかねないので、イースターやクリスマスなどの親族が集まる場では政治的な話はご法度だという。国民の分断をあおるような政策が続き、米国は一層カオス化するのか。前途多難な船出となったことだけは間違いない。(プーセンプ麻衣=ロチェスター在住)

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