リポーター発

トルコ

トルコ・土鍋料理 四季折々の味

2017/4/5
ギュヴェチで作った熱々のピラフを盛り付ける店員

ギュヴェチで作った熱々のピラフを盛り付ける店員

 首都アンカラに注目すべき料理がある。アンカラ市内から北西に100キロほどのベイパザル市。ここにはオスマン帝国時代の古民家が多く残る。改修が繰り返され、今も市民が暮らしている。観光地としてにぎわう小さな町だ。
 散策していると郷土料理を提供するハス・デイルジメンジオールという店に出合った。昼時なので多くの料理がカウンターに並んでいたが、中でもひときわ目立つ料理がギュヴェチだった。
 ギュヴェチとは土鍋の意味で、煮込み料理に使われるトルコの調理道具である。日本の鍋料理と同じように市民生活におなじみの一品である。粘土質の土で素焼きしてあり、熱も伝わりやすい。ゆっくりと火がまわり、具材のおいしさも引き出せる。保温効果もあって特に寒い冬にはもってこいの代物という。
 種類も豊富。大小だけでなく、深さもいろいろ。用途や具材によって使い分けるそうだ。夏なら煮込み料理に欠かせないナスやオクラがおいしい季節。冬にはニンジンやジャガイモを入れた熱々の料理を楽しむ。一年中使えるので非常に重宝されている。
 沿岸地方では、サケやスズキを材料にした料理が知られる。驚くことに、家でギュヴェチに具材を入れ、行きつけのパン屋さんに持ち込んで、窯の隅っこで一緒に調理してもらうのが一般的なのだとか。もちろん無料らしい。
 電気でなく、まきでパンを焼くので余熱も十分。市民にとって屋外のオーブンと言える存在だ。共同で使う窯や家のオーブンでも作れるが、大きな窯で作ると、仕上がりも食感も格別なのだそう。
 珍しい種類は、お米を加えて炊くベイパザル市のギュヴェチだろうか。うまみを出すために、放牧され高原の草を餌にする良質の牛と羊の肉が使われる。よく炒めた一口サイズの肉に水を加えて4時間煮込む。じっくり軟らかくなったころ、トマトやシシトウ、塩、黒こしょう、赤唐辛子、お米を加えて、全体をざっくりと混ぜ合わせる。その後は、アルミホイールでふたをして、窯に入れて45分待てばよい。
 出来上がりは、具だくさんで見た目も豪華、実に食欲をそそられる。大量のバターで肉を炒めているので少し油っこいが、そのうまみをお米が吸っており、いい感じ。土鍋と窯の両方のいいところを存分に使って仕上げた炊き込みご飯は絶品の一言につきる。
 この地域では、結婚式やお葬式、宗教的な特別な日に大勢で分け合いながら食べる料理だそうだ。煮込み料理が得意なトルコ人には、ギュヴェチは欠かせない調理道具である。日本の鍋と同じように、仲間が集まる際に食卓の真ん中にギュヴェチがあれば、料理だけでなくみんなの心も身も温まる。そんな存在なのだ。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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