リポーター発

イギリス

英国・個人の「寄付意識」高く

2017/4/17
がん患者たちを支援するお店。販売された衣服などの収益はそのまま寄付される 

がん患者たちを支援するお店。販売された衣服などの収益はそのまま寄付される 

 国の常識、道徳は、その国の宗教に起因するといわれる。日本はクリスチャンでなくても、クリスマスを祝ったり、教会で結婚式を挙げたりするが、他国から見ると、不思議な無宗教国家に映るらしい。
 英国の主な宗教は英国国教会である。英国の宗教はカトリックが長く支配していたが、16世紀にイングランド王のヘンリー8世が離婚を認めないローマ法王庁と決別し創立したのが英国国教会である。離婚をするために新しい宗教を起こしたこの国王は5回の離婚を繰り返している。
 さて本題に入ろう。今回、紹介したいのは英国民の「寄付の意識」である。私見だが、英国人はその意識がかなり高いように思う。例えば、不要になった自分の衣服や靴、陶器、ガラス製品などを、貧困をなくす活動をしている国際協力団体「オックスファム」や、がんをサポートする団体の店に持って行く。販売された収益がそれぞれの団体へ寄付される仕組みになっており、国内ほとんどの街にそうした店がある。
 世界各地で災害が起こったときも、英国民は自発的に被災地へ寄付を送る。2011年3月に発生した東日本大震災の時も寄付活動が盛んだった。重要な点は、それが個人の寄付ということではないだろうか。子どもがクリスマスに両親たちからもらったお金をそのまま全額寄付することも珍しくない。日本における寄付が慈善団体や会社単位なのとは対照的だ。
 先月22日、ロンドン中心部の英国会議事堂付近で起きた襲撃事件で、警備中の警官が襲撃犯の男に刺されて死亡した。事件後、彼や遺族に対する寄付を募ったところ、1時間余りで日本円にして約7500万円が集まった。これも全額個人の寄付。警備に命をささげた彼への感謝や尊敬の念があったればこそだろう。
 日常生活ではどうだろう。路上でお金をせびっている人がいる。すると、通行人が彼らにお金を差し出す場面にしばしば遭遇する。渡しているのはどうやら英国人だけのようだ。
 個人の寄付とはいえ、スケールの大きさに驚くケースもある。皆さんもよくご存じのピーターラビットの著者ビアトリクス・ポター。彼女は英国北部の湖水地方に魅せられ、本の印税で広大な土地を手に入れた。それを含む全財産を他界した後、民間の自然保護団体「ナショナル・トラスト」に寄付したことはよく知られている。
 さらに、ロッタリー(宝くじ)で3億円が当たった老婦人は100万円だけを受け取り、親族の猛反対を押し切って全額を慈善団体へ寄付した。「自分は年金だけで十分なのだ」と。こういった英国人の寄付意識の高さが宗教観に基づくのか分からないが、せちがらい今の日本ではまず考えることができない。そう思うのである。(渋谷英秋=ロンドン在住)

この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧