リポーター発

トルコ

トルコ・羊の臓物 外見上回る味

2017/7/26
大鍋からシュルダンをすくう少年。アダナのソウルフードとして絶大な人気だ

大鍋からシュルダンをすくう少年。アダナのソウルフードとして絶大な人気だ

 トルコ中南部のアダナ県にあるバスターミナルに到着した。私が暮らす内陸部の乾燥したコンヤから山を越え、地中海に近いデルタ地域に位置するアダナ。暑いだろうと予想はしていたが、私をさらに苦しめたのは湿気。体中から一気に汗が噴き出す感じだ。
 市内バスに乗り換える前、小さな屋台で何人かが肩を寄せ合い“いなりずし”のようなものをかじっていた。辺りが薄暗くなり、急いでいたので気になりつつも後にした。
 ホテルにチェックイン後、従業員にお薦めの食べ物を聞くと「シュルダン」という力強い答えが返ってきた。「これを食べなきゃ、アダナを堪能できないよ」「ぜひ食べて。夜にはシュルダンを売る屋台が出るよ」。そして、教えられた場所に行くと、先ほど見た光景が目の前に。屋台が数軒並んでにぎやかだ。
 「あの時見たのはこれだったのか」とうなずく。屋台や人が集まる雰囲気からすると、日本のおでん屋さんに似ている。期待が高まり大きな鍋をのぞくが、見た目が悪く、食欲を決してそそらないであろう物がたくさん煮てあった。
 その正体は羊の胃と腸の間の部位だそう。中にトマトで味付けしたお米をぎっしり詰め、それを大鍋で3時間ほど煮込んである。子羊か、1歳くらいの雄のそれが柔らかく、おいしいそうだ。イシケンベ(胃)、ムンバル(大腸)にお米を詰めるのは有名だがこの部位は珍しい。
 トルコ中を旅しているが、これまでで一番見た目が悪かったので、かぶりつく気になれなかった。だが、ホテルの人に薦められたし、左右はシュルダンにかぶりつく人ばかり。お代わりする人も続々だ。男性だけでなく、女性、子どももたくさんいる。
 負けじと食べ方を伝授してもらう。お好みでスパイスのクミン塩と唐辛子を振りかけるらしく食べ方は自由だ。かぶりつくと、中からぎっしり詰まったピラフがぽろぽろと出てきた。内臓だが丁寧に洗っているので臭みはなく、軟らかい。
 見た目のことは一口食べれば忘れてしまう。スパイスが淡泊な内臓に香りを付けてとても美味だし、赤唐辛子でいただくとお代わりがしたくなる。イスラム教徒が多いトルコであるが、お酒を飲む人は結構多い。飲酒後の一品として、よく食べられるのも納得だ。
 大鍋の中に何百個も入っているのにあっという間に売り切れる。アダナ県といえば、ひき肉の串焼き・アダナケバブが全国的に有名だが、シュルダンは現地限定の人気。逆に、通しか知らないこのシュルダンを住民と一緒に食べれば一気に仲良くなれるだろう。こうして、街中は日暮れから真夜中まで、屋台を訪れる老若男女でにぎわっている。(コンヤ在住=岡崎伸也)

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