リポーター発

トルコ

トルコ・トマト 食文化の主力に

2017/11/6
トルコ料理になくてはならないサルチャ作りは分担作業で実に手際がよい 

トルコ料理になくてはならないサルチャ作りは分担作業で実に手際がよい 

 9月下旬、内陸部のコンヤ県アクシェヒル郊外にあるレストランに行った時のことだ。店の裏側にある広大な土地で収穫されたトマトで、サルチャと呼ばれるペーストを作る作業がピークを迎えていた。お願いして見学させてもらった。
 聞けば、レストランで使うサルチャはここで取れるトマトですべて賄っているそう。畑のそばに処理場があり、5人の女性が働いていた。トマトがどっさりと積まれているのだが、分担作業で実に手際がよい。
 彼女たちに、この時季に自家製のサルチャを作る理由を聞いてみた。というのも、工場で作られた瓶詰めの既製品が簡単に手に入るのに、なぜなのか不思議に思ったからだ。まず、夏はトマトが大量にできて安く手に入るから。さらに冬のハウス栽培物に比べて、夏物は太陽の恵みを受けて栄養価が高いから。最後に市販より、自分たちで一から作ったほうが、安心・安全、かつおいしいものができるためという。
 サルチャに使うトマトは、このレストランのように庭などで栽培した自家製を使ったり、最寄りの市場で何十キロまとめて買ったりとさまざまだ。県外からトマトを満載した大きなトラックが、直接売りに来ることもあるそうだ。
 作り方は―。大きなたらいでトマトを水洗いし、へたや虫食い部分を除く。その後、適度な大きさに切って、ナイロンの袋に入れて岩塩とトマトを交互に加える。袋がいっぱいになったら口をしっかりと縛り、炎天下で1週間ほど放置する。
 その後、水分が出てかなりやわらかくなったトマトをこし器の上でつぶす。そして約10日間、天日干しで水分を抜く。大鍋で煮詰めて最後の仕上げに3、4日天日干しする方法もあるそうだ。みそのようにねっとりとペースト状になったら完成だが手間のかかる一品だ。空気に触れないよう容器に入れ冷暗所で保存すれば、来年まで保存できる。
 ご存じのようにトマトは南米原産。コロンブスの新大陸発見が1494年なので、オスマントルコが全盛期だった時期にはトマトはまだ伝わっていなかった。トルコでは、19世紀ごろ、ようやく赤いトマトが定着してきたので、トマト料理の歴史は意外と浅い。
 それまでは肉などの煮込み料理には、レモンや乾燥したイチジク、スモモ、チェリー、そして未熟ブドウを一緒に煮込んでいた。遅まきながら登場したトマトは、料理の色や酸味、甘味、うま味の全ての面で絶大な効果がある食材として人々を魅了してしまった。
 今では、サルチャなくして、トルコのおいしい料理はあり得ないと言ってもよいほどである。トルコの食を根底から変えてしまったトマト。定着して食文化の主力選手になった時代の流れにロマンを感じずにはいられない。(コンヤ在住=岡崎伸也)

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