リポーター発

トルコ

トルコ・村挙げてシロップ製造

2017/12/11
ペクメズの仕上がりを見極める女性

ペクメズの仕上がりを見極める女性

 11月初旬、トルコの欧州側のトラキア地方にあるクルクラレリ県を訪れた。中心部から南東部に位置するポイラル村ではテンサイ(砂糖大根)からペクメズ(濃縮シロップ)を作る時期でにぎやかだった。
 乗り合いバスを降りるや、テンサイを山盛りに積んだトラクターが村へと入っていくのが見えた。その後を追うと、村の一角で蒸気が立ち込めている場所にたどり着いた。そこが今回訪れたバイラックタル家である。この村では各所にテンサイで作るペクメズ製造所が点在し、15カ所もある。重要な産業であり、大事な収入源でもある。
 ペクメズはブドウやリンゴ、桑の実などから作られる。通常は、各戸が1年間に自宅で消費する程度の量をまとめて作るか、工場で大規模生産し市販されるかのどちらか。この村の場合、数家族が協力して製造所を運営し、みんなが1年間暮らせる収入を確保できるほどの量を生産する。
 製造場には大鍋(深さ1・5メートル、直径1・3メートル)が二つと浅鍋(同30センチ、同)の浅鍋が五つ並べてあった。大鍋に20センチぐらい水を入れて、砕いたテンサイを鍋の縁ぎりぎりまで750キロ入れる。それを薪で10〜15時間ほど煮る。水が減れば足しながら、均等に軟らかくなるように混ぜる。
 大釜を混ぜている男性が味見をさせてくれた。初めて食べたが、その甘さに驚いた。砂糖大根と言われるだけはある。簡単にすりつぶせるようになったら、これを隣にある大きなステンの網に移し替えてその汁を布で丁寧に濾(こ)す。汁はポンプで浅鍋に移され、そこであくを取りながら6時間煮詰めて完成。最後にもう一度布で濾して冷ます。
 750キロのテンサイから120キロのペクメズができる。シーズン中は10トン以上作るというから大変な作業だ。できるのは1日に250キロが精いっぱいだそう。テンサイを収穫しながら、しかも天候にも左右される作業は4、5カ月の間続く。ペクメズはペット容器に入れて、1キロ400〜500円ほどで直売する。
 家族の大事な収入源なのでみんな一生懸命に売る。「娘を大学に行かせているので頑張って売らないとね」とある女性は話した。商店を経営するバイラックタル家は村を貫通する幹線道路の脇にある。ポイラル村は「テンサイのペクメズ」で有名なこともあり、通り掛かりの車が止まり、何本も買っていく。
 鉄分を含み、血を作り、消化器官をよく働かせる効能があるというペクメズ。パンに塗るなど朝食には欠かせない。これから寒い時期には体を温め、免疫力を上げるそうで需要はさらに高まりそうだ。数時間の滞在だったが、ペクメズで生計を立てる村の暮らしぶりを肌で感じた体験だった。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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