リポーター発

トルコ

トルコ・青かびチーズ 朝食の友

2017/12/11
コンヤにある大きな市場で、青かびチーズの品定めをする男性

コンヤにある大きな市場で、青かびチーズの品定めをする男性

 トルコのへそと呼ばれる内陸部のコンヤ県。中心部で買い出しをする際は、カドゥンラル・パザル(夫人たちの市場)へ行くことにしている。かつては近隣の村でとられた野菜や野草、果物、各家庭で作った保存食などが村人たちに持ち込まれ売買される市場だった。近年では外部から大量に入ってくる食材を売る市場に生まれ変わった。
 多種多様の品々の中でもひときわ目を引く珍しい食材がキュフル・ペイニルと呼ばれる青かびチーズだ。青緑色の菌で覆われ見ただけで食欲がなくなる。その不気味さは有名なイタリアの青かびチーズ、ゴルゴンゾーラどころではない。
 それなのに不思議と、どの店でも店主が味見を勧めてくる。逆にどうやって作るのか興味が湧いてきた。羊や牛の乳を搾り、一度、脂肪分(クレマ)を分離させ、脂分が少なくなった乳を50度を超えない程度に温めて酵母を加える。分離が始まり凝固したら布袋に入れて濾(こ)す。最後に重しを載せて丸1日かけて水を抜くのだそうだ。
 そして細かくほぐし、塩を振った後、空気に触れないようしっかり入れ物に詰める。本来ならヒツジやヤギの革を袋状にした入れ物に詰めるが今ではプラスチック製の容器が多い。この容器の場合、水分を抜くために針で小さな穴をいくつか開け、適温とされる10度以下で5カ月以上保存する。洞窟や冷暗所、土中など場所はいろいろだ。
 塩は入れ過ぎると、発酵を遅くするし、乳の脂が多ければ、かびが付きにくくなるので、微妙なさじ加減が求められる。発酵が進むと、水分が抜けた所から青かびができ始め、白いチーズが青緑に変色する。
 店主が「この青かびチーズは自然界の抗生物質といわれている。体にとっても良い」と教えてくれた。ただ各戸で必要な量だけを手作りしていた昔と違い、現在は商用ベースで大規模生産されているので、ヒツジやヤギの革に詰めてじっくり熟成させる手法のチーズは減っているそう。人工のかびを加えるなど、短縮させる作り方もあるらしい。
 最近では、くせがあるヒツジの乳に代えて牛乳で作ったものが人気という。名前のキュフルは「かびが生えている」の意味なので、イメージを一新するため、イェシル・ペイニル(緑色のチーズ)としてPRする販売戦略も行われ、ようやく認知され始めたそうだ。
 コンヤでは、青かびチーズはタンドール(土釜)で焼いた熱々のパンにはさんだり、パン生地に包んだりして焼いて食べるのがとても好まれる。熱でとろりと溶け、青かび特有の香りとこくが口いっぱいに広がるのだ。朝食には欠かせない存在である。チーズ一つとっても、現地の人の嗜好(しこう)の違いを見ることができて興味深い。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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