リポーター発

トルコ

トルコ・職人の技 レバーフライ

2018/2/21

 トルコ北西部に位置する欧州側はトラキア地方と呼ばれる。ギリシャとブルガリアに国境を接するエディルネ県には、オスマン帝国の最高建築家であったミマール・シナンが建てたセリミエ・ジャーミィ(イスラム寺院)がある。世界遺産としても知られる。
 中心部にある複合施設キュッリエには、アーケードやハマム(公衆浴場)などが今も残る。観光を終えておなかがすいたら、誰もが名物のタワ・ジエリ(牛レバーの唐揚げ)の専門店が軒を連ねる飲食街に向かう。
 私が訪れた店「エディルネ・ジエルジ」は、この道50年を超える職人ムスタファさんが切り盛りする。レバーの特徴は何といってもその薄さ。ナイフで2、3ミリ程度に切るのだが、ヤプラック・ジエリ(葉っぱのように薄いレバー)という別名があるほどである。
 生後1、2歳の牛の肝臓が最も適しているそう。成牛よりも色が鮮やかで、味も申し分ないとか。新鮮さを保つため、表面の膜をむきとり、血管や筋などは丁寧に取る。それを洗って軽く塩をふり一晩寝かせて翌日切る。下処理を十分するので臭みがなく、食感がなめらかになるそうだ。
 注文が入ると、小麦粉を均等にまぶし、余計な粉をしっかりふるって、170〜180度の油で熱した大きな深めのフライパンに入れる。1〜2分程度揚げて出来上がり。名産物ヒマワリの油を使うのもみそだ。
 このレバーフライは、レバーが苦手な人も食べられるそうだ。ムスタファさんは「薄いのであまり火を通し過ぎないよう、軟らかめに仕上げている。レバー本来のうまみがぎっしりで一番おいしいよ」と笑顔で説明してくれた。
 私も早速いただいた。表面がカリッと揚がり、中はふんわり仕上がって熱々だ。レバー独特の臭みもなく、甘くてとても食べやすい。薄いのでスナック感覚で食べることができる。
 そして、この皿と一緒に出されるのが、ギリシャとの国境に近いカラアーチという土地で育つ唐辛子である。緑のうちに摘み取り、乾燥させたものを素揚げした一品。お茶のように香ばしく、サクサクした食感でスナック菓子のようだ。もちろん辛いが、口直しに塩味のヨーグルトドリンク・アイランをいただくとよい。
 彼らによると、60年ほど前、職人が既存のレバー料理の食感をよりよくするために薄くしたことが全ての始まり。そして、ここ10年の美食ブームや世界遺産登録の影響でエディルネが有名になり、県外や国外から多くの観光客が訪れるようになった。
 急激なブームで店舗が急増し、質が下がったとの声も上がるが、トラキア地方で生産されるレバー、小麦粉、ヒマワリ油、唐辛子を使って、職人の技が奏でる名物料理。食べずには帰られない。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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