リポーター発

トルコ

トルコ・名物と技 ぜいたくな味

2018/3/5
カトメルを手に人懐こい笑顔をみせるメフメットさん

カトメルを手に人懐こい笑顔をみせるメフメットさん

 トルコ南東部にあるガズィアンテプ県。ここの名産物の一つがピスタチオだ。私たちが日本でおつまみとして食べているものは、イランや米国産の大粒で油分の少ないものだが、この地のピスタチオは細身で肉厚ではないが油分が多く、とにかく香りがよい。
 殻の中の実は鮮やかな黄緑色で宝石のように美しい。いただくと独特の香りが鼻から抜ける。日本でも「スーパーグリーンピスタチオ」としてキロ当たり1万円ほどの高い値段で売られている。そのピスタチオをふんだんに使ったガズィアンテプの朝食にカトメルがある。一般的にトルコでカトメルと言えば小麦粉から作る、層になっているパンのことである。
 ゼケリヤ・ウスタという地元の名店があると知り、訪れた。遠くイスタンブールや県外から食べに来る人が後を絶たないそう。実際、私もその一人なのだが…。日曜日の早朝、閑散とする商店街でこの店だけは大繁盛だ。
 店主のメフメットさんは4代目。今は、主に弟子が作り、自身は、お客さんをさばき、注文を取り、店を仕切る。忙しい合間をぬって、作り方を見学させてもらった。
 まず、油を塗って1日寝かせた小麦粉の生地を、延ばし棒で少し広げる。その後は生地を手に取り、両手をスナップさせながら、大理石の台に打ち付ける。遠心力をうまく使い10回ほど続けると、あっと言う間に透けるほどの生地になる。その軽快な職人技には目を奪われる。
 その上にカイマックと呼ばれる新鮮な乳脂肪を載せ、そこに細かくひいたピスタチオと砂糖をまんべんなくふりかける。薄く広げた生地の四隅を真ん中に向かって折り畳み、正方形にして窯で焼き上げる。
 仕上がりの大きさは20センチ程度。食べやすいように5センチ角に切ってある。焼きたてを手でつまんで食べると表面はカリカリ。後からピスタチオの爽やかな香り、カイマックのこく、砂糖の甘さが口の中に一気に広がる。これには牛乳が一番合うとのことで注文を勧められた。
 そもそもガズィアンテプでは、結婚式の翌日の朝、一緒になった夫婦が、初めての朝食をこのカトメルで始めるという風習があったそう。これは、晴れて結婚した2人が、一生甘い生活を送れるように、という思いが込められているとのことだ。
 メフメットさんとは、「あなたのカトメルを日本のお客さんの前で作って食べさせてほしい」と、そんな話も交えながら楽しいひとときを過ごした。
 ピスタチオを、こんなにぜいたくに使えるのもガズィアンテプだからだろう。ご当地ならではの名物と技が生かされた甘いぜいたくなこの一品を味わったら、誰もが一生の思い出になると思う。メフメットさんは、私がトルコで出会った、日本に招待したい職人の一人である。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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