リポーター発

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米国・森に感謝 樹液シロップ

2018/3/19
シュガーメープルの樹液採取の様子

シュガーメープルの樹液採取の様子

 わが家が暮らす町のダウンタウンから歩くこと数分。開発された住宅地の一角に市所有の自然保護区域がある。そこは手付かずの森で、オークやメープルなどの木々が生え茂り、小川のせせらぎが心地よい場所。小道があり、春夏は木漏れ日、秋は紅葉、冬は雪景色を楽しみながら、ジョギングや散歩をすることができる。16エーカーもある自然豊かなこのエリアは、鳥やシカ、リスなどの野生動物、さまざまな昆虫や植物が生息する。近隣住民にとって自然と触れ合える癒やしの空間だ。
 先日ここを訪れると、くい打ちされたシュガーメープルの木に1ガロン(約3・8リットル)容器が掛かっていた。一滴一滴ゆっくり集められた樹液、これこそメープルシロップの唯一の原材料。子どもたちの体験学習のため、毎年、町の自然センターがこうして樹液採取の実演をしているのだ。
 シュガーメープルは夏から秋にかけて光合成ででんぷんを作り、冬の寒さから根を守る。そして雪解けの春、そのでんぷんは糖分になり、樹液とともに木の中を巡り始め、春の芽吹きのエネルギーになる。その時期は、昼間は0度以上、夜は0度以下を繰り返す2月終わりから3月にかけての数週間のみ。1ガロン容器とシュガーメープルの木、という面白い風景は、春の始まりの風物詩といえる。
 シュガーメープルの樹液自体は水のようにさらりとしてほとんど味はない。これをじっくり煮詰めて琥珀(こはく)色のメープルシロップに仕上げる。その昔、ヨーロッパの入植者たちが原住民のインディアンからメープルシロップ作りの知恵を授かったという。彼らは、雪が残る森の中でキャンプをしながら、「砂糖小屋」と呼ばれる建物を作り、そこで集めた樹液を昼夜絶えず煮詰めていく作業をしていたそうだ。隣国カナダの特産品として有名だが、国境を接するここミシガン州にもメープルシロップや、さらにその水分を飛ばしたメープルシュガーを作る人々がいる。
 自然センターの管理人によると、このエリアで1本のシュガーメープルの木から採取できる樹液は、木の健康状態や樹齢、気温にもよるが、10〜20ガロン程度。くい打ちをする木は、直径50センチ以上のしっかりしたものから慎重に選ぶのだという。集まった樹液は自分で容器を持ってくれば誰でも持ち帰り自由。去年は私もシロップ作りに挑戦したが、1ガロンからはわずかな量しかできなかった。というのも、1ガロンのメープルシロップを作るのに必要な樹液の量はなんと40ガロン。メープルシロップの生産量には限りがあり、希少性がとても高いのだ。
 工場で大量生産するのではなく、森に気遣いしながら、少しだけ大地の恵みを分けてもらう。100%天然のメープルシロップとは、こうして手間ひまかけて作られた自然にやさしい甘味料だ。コーンシロップにメープルの風味を加えたパンケーキシロップに比べ、糖分やカロリーが低く、ミネラルなどの栄養価が高いという。
 パンケーキにかける時は大事にいただきたい、と思う。(プーセンプ麻衣=ロチェスター在住)

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