リポーター発

トルコ

トルコ・塊がドン 衝撃の肉団子

2018/10/10
アブディギョル・キョフテスィを盛り付けるシェフ

アブディギョル・キョフテスィを盛り付けるシェフ

 真夏の8月、トルコの東部アール県でイランとの国境の街・ドーバヤズッドへとやって来た。道中、乾燥した大地を走る乗り合いバスの窓からは熱風しか入ってこない。これから始まる壮大なユーラシア大陸を感じ、とてもワクワクさせられる。そして、トルコの最高峰で、ノアの箱舟が漂流した伝説の残るアララット山が、街からはっきりと見える。真夏にもかかわらず、頂は雪で真っ白に覆われていた。どっしりしていて貫禄があり、かつ優美な姿に滞在中は見とれてしまう時がしばしばあった。写真では感じることができない感動がある。
 早速、名物料理探しに出掛けると、衝撃的な肉団子料理を見てしまった。名前はアブディギョル・キョフテスィ。肉のスープで炊き上げたシンプルで白いピラフの上に、ソフトボールほどの大きいゆでた肉団子が載せてあるだけ。灰色の肉団子と白色のピラフというコントラストのない取り合わせに、食欲は全く湧かなかった。おいしくなさそうだというのが正直なところだった。
 それが食べてみるとどうか。スポンジのように肉汁を吸っていたのだろう。フォークで割ろうとすると、しっかりとした弾力でかなりの肉汁がしみ出す。塩の加減もよく、ピラフと肉団子だけで十分だった。
 担当者に話を伺うと、別の場所に連れて行って、その作り方を見せてくれた。部屋に入るや、女性たちが石の上に肉の赤身を置いて、木づちでひたすらたたいている光景が目に飛び込んできた。余計な筋を丁寧に取りながら、肉を2時間以上もかけてトロトロの液体状にする。その状態になったら、細切りに切った玉ねぎと塩を加えて丸めて大鍋でゆでる。肉を形成する際、手のひらからすべり落ちそうなほど柔らかい。こんにゃく作りに似た感じだった。
 別の鍋では、少し長めの米を水に浸しておいて、ざる上げし、バターで炒める。そこへ、ゆでた肉団子とゆで汁でじっくり炊き上げる。肉をここまでたたく必要がなぜあるのか? 一説によると、400年ほど前、この地域を治めていた将軍が胃を悪くし、医者から肉を止められた。本人はどうしても肉が食べたい。そこで料理人が考えに考えた末、窮余の一策でひねりだしたのが、この料理だったそうだ。
 胃に優しい料理で、将軍も食べることができ、病気も回復したのだという。そこで、その将軍の名前を取った料理となった。見た目は砲丸そのものだが、その背景には、意外な言い伝えと昔ながらの特別な調理法があり、これほどまで手間がかかっているとは思いもよらなかった。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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