リポーター発

トルコ

トルコ・文化守るチェルケス人

2018/11/19
おもてなしの料理であるバスタ・シプス

おもてなしの料理であるバスタ・シプス

 トルコ国内を旅すると、たくさんの民族が住んでいることが分かってくる。少数民族の中でもクルド人が一番多く、次がチェルケス人と聞いた。トルコでチェルケスとは、北コーカサス地方から移民してきた民族の総称。オスマン帝国衰退時、ロシア帝国が南下政策でロシア化を進めるために北コーカサスを征服。移民政策が1864年に始まり、多くのチェルケス人は故郷を失い、世界へと散らばることとなり、オスマントルコ領へはその多くが移住した。黒海沿岸で冬季オリンピックが開かれたソチは、チェルケス人の故郷でもある。
 一度その文化に触れたいと思い、彼らが多く住むカイセリ県を訪ねた。コーカサス協会で、会長に紹介してもらったヒクメットさんが迎えに来てくれ、実家に連れて行ってくれることになった。そこは、カイセリ市内から車で東へ約2時間行ったプナルバシュ市のカラボアズ村だ。
 夕方、女性陣がバスタ・シプスという料理の準備を始めた。ハレの日やお客さんが来た時には、これでおもてなしをするのが彼らの文化だ。鍋にバターを溶かし、みじん切りの玉ネギを炒め、赤唐辛子を加えた後で鶏を丸ごとゆでたスープを加える。ボウルに水と小麦粉を混ぜたものを少しずつ加えて、かなりとろみがつくまで火を入れてかき混ぜる。
 味付けは砕いた生ニンニクと塩を加え調整。皿に盛り付けて、仕上げは溶かしバターと赤唐辛子で作ったシーズニングオイルを垂らす。最後はゆでた肉を盛り付ける。配られる肉の部位は、家の年配者やお客には優先して大きい部位、または柔らかい胸肉が提供される。ゆでてしっかり練ったひき割り小麦が添えられ、スープに付けながら食べる。
 食事を共にし、彼らと話を深めていく中で実感したのは、自分たち独自の文化にとても保守的だということだった。移民して150年たつが、独自の文化を守っていこうとする地域や家族は、同胞意識も非常に高い。チェルケス人であることをとても誇りに持ち、そのことを家族何世代、誰もが思っていることに驚いた。
 特に同じチェルケス人同士の結婚を重んじる。自らの文化を継承するとともに、結婚した時、お互いに文化や慣習の違いから苦労をしないようにとの思いがある。カイセリ県の中心にはコーカサス協会もあるため、独身同士が知り合うことも可能だ。協会を通してコミュニティーが維持されているし、言語や文化継承なども行われているので、その存在意義は大きい。
 現在、世界的な人権尊重の風潮から、イスタンブールのチェルケス協会が中心となり、公にチェルケス語での教育や放送、出版などを勧める試みも盛んになっている。その一方で、トルコ共和国内でトルコ国籍として住むことで、言語や文化もトルコ化し、移民文化が失われてきているのもまた自然なことといえる。彼らからチェルケスの歴史や食文化、慣習などを聞き、異国の地で暮らす中で自らのアイデンティティーを守り続ける生活を垣間見た。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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