リポーター発

トルコ

トルコ・淡水魚 まさかのうまさ

2018/12/10
シャブットを見せてくれるシェフ

シャブットを見せてくれるシェフ

 メソポタミア文明が成り立つ上で重要な要因となったチグリス川が流れるトルコ東部、バトマン県・ハサンケイフを訪れた。ローマ、ビザンチン時代から交通の要衝として栄えた町だ。川には崩れかけた橋脚だけが残っており、多くの時代、この橋を行き来していたのが想像できる。そびえる岩山には古い要塞(ようさい)や洞窟住居がある一方、川のほとりで水遊びやピクニックをする光景も見え、観光地とはいえ、とてものどかな場所である。
 川辺に面したレストランのそばを歩くと、食堂の店員が聞いたこともない魚を薦めてくれた。見た目はナマズかなと思ったが、この川で取れた「シャブット」というコイ科の淡水魚らしい。はるか昔から食べる習慣があったという。毎日現地の人が取って、売りに来るので、それを買い付け調理しているそうだ。おいしさには自信があるようだったが、新鮮なものを食べたいと思い、翌朝出向くことにした。
 翌日、約束通り店で待っていると、取れたばかりのシャブットが運ばれてきた。魚をさばく際に、大きさとその迫力から食べるのをちゅうちょしそうだったが、皮をはぐと、スズキやタイに似た白身に赤い模様が出てきた。生でも食べられそうで、意外においしいかもしれないと思えた。
 これを網焼きして提供。食べると川魚によくある臭みが全くしない。大骨はあるが身も多く、骨離れがとても良い。脂身はブリのようで濃厚、ほろほろとした身のほぐれ感も似ている。それでいてスズキのようなおいしさでしつこさもない。これはうまい! トルコで食べたコイやマスの淡水魚では群を抜いていた。ここでは、添えてあるパンに挟んで食べたが、照り焼きにしてご飯と食べてもいけるぞ。まさか、ここでこんな名物に巡り合えるとは…。川辺の高台にある食堂のテラスから遺跡を眺めながらの食事は、忘れることはないだろう。
 というのも、何と、この辺りがまもなくダム湖に沈んでしまうのだ。数十年にわたり計画されていたダム建設は、紆余(うよ)曲折あったが、ついにその時が来るようだ。遺跡の一部を移動させる大プロジェクトで、住民には新たな地区を設け、モダンな家が用意される。反対派がいまだ多い中、最終段階に入っている。
 国の発展に電力が必要なのは理解できるし、今の時代には現地の暮らしが合っていないことも事実。だが、この地が紀元前から存在するこの場所を、簡単に今の時代であっさりと変えてしまうのはどうなのか。貯水、かんがい、電力…。住人が現代の生活に近い形で暮らせるのは、良いかもしれないが、それと引き換えに歴史、環境、生態系なども変えてしまうことになる。
 昔から歴史を受け継いで築いてきたこの町。自然と遺跡が調和する、こののどかな空気感が一転し、違和感しかない別の景色へと変貌してしまうのだろうか? トルコの至る所で、昔ながらの景色が、整備という名の下、がっかりした光景を何カ所も見てきた。その破壊が気になって仕方ない。
 毎日この川で取れるシャブットも、今後どうなるのだろう? 食事をしながら、店主やお客さんと今後のハサンケイフ談義となった。(岡崎伸也=コンヤ在住)

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