リポーター発

トルコ

トルコ・アンズと肉 郷土の煮物

2019/1/9
チルレメを盛り付けるヌルテムさん

チルレメを盛り付けるヌルテムさん

 トルコの内陸部、中央アナトリア地方のクルシェヒル県を訪れた。文化観光省を訪ねて局長さんと会い、郷土料理本の監修もしたヌルテムさんという女性を紹介していただいた。後日、彼女の自宅に招待してもらえることになり、郷土料理の代表でもある「チルレメ」を作ってもらった。
 チルレメのチルとは、中央アナトリアの言い方で、種があるアンズを意味する。レメは前の名詞を動詞化し、つまりアンズを使うという所からこの名が付いている。トルコでは、乾燥アンズは種を抜いたものが一般的だが、この料理には種が付いているものを使う。
 また、ブドウの濃縮シロップであるペクメズで具材を煮ることも特徴だ。味は濃厚な黒蜜に近い。トルコ各地でもペクメズはお菓子で使うならまだしも、メインの料理に使う所は珍しい。昔、砂糖がなかった時代にはペクメズを使っていたのは聞いていたが、今の時代にも引き継がれているのは驚きだった。
 調理法は至って簡単。肉(羊、牛)やひよこ豆はあらかじめ全てゆでておき、乾燥アンズは6時間ほど水に浸して戻しておく。鍋にバターを入れ、みじん切りの玉ねぎを炒める。ほんの少しトマトペーストを加えて混ぜた後、肉、ひよこ豆、アンズを入れ、熱湯を加える。黒コショウ、塩、赤唐辛子を加え、しばらく煮た後に、コップ一杯のペクメズを流し込む。じっくり40分煮込むと完成だ。
 甘いペクメズを煮物にこんなにも多く加えるなんて、仕上がりはどうなのかと不安になっていた。隠し味にスプーン一杯ならともかくだ。しかし、食べてみると唐辛子の辛さも効いていて、日本食の甘辛いしょうゆ煮に近く、逆に親しみを持てたほどだった。夜に煮て、朝まで一度冷ますと、肉にペクメズの味がしみ込み、よりおいしいとのことだ。また、種がある乾燥アンズは種なしとは違うおいしさがある。日本でいうと、種のない梅干しを食べるより、種のあるものを食べたほうがおいしく感じるのと同じかもしれない。
 本来この料理は、クルシェヒル県内にあるオズバーという町の結婚式に欠かせない料理として有名なのだそうだ。そこでは、数種類の料理の後、肉が入っているにもかかわらず、食後の一品として出されるという。酸味、甘み、辛みが一品の中にあるのが、この料理の要らしい。現在のトルコ料理の煮込みはトマトベースが多い中、クルシェヒルにはこの他にもペクメズを使った料理があった。特にマルメロをくり抜き、米とひき肉を合わせたものを詰めてペクメズで煮たアイワドルマス(マルメロの詰め物)が印象に残った。
 クルシェヒルは内陸にあり、人口が少なく開発も遅い地域である。外からの影響が少ない環境からか、食には保守的といえる。一方で毎年、郷土料理コンテストが行われるほど、食文化の継承には積極的だ。トルコ国内ではあまり目立たない県ではあるが、コンテストの審査員でもあるヌルテムさんたちが、クルシェヒルの食文化を下支えしながら、継承に貢献している。(岡崎伸也=コンヤ在住)

この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧