リポーター発

インドネシア

【インドネシア】夢広がる古代魚の海

2019/3/5
マナドの海に、今にも跳びはねるかのようなシーラカンス像。ここは市民の魚釣りのポイントでもある 

マナドの海に、今にも跳びはねるかのようなシーラカンス像。ここは市民の魚釣りのポイントでもある 

 「生きた化石」、シーラカンスをご存じだろうか。4億年前に登場し、7千万年前に絶滅したと考えられていた古代魚。それが1938年に南アフリカで発見され、世紀のニュースとなった。その後、マダガスカル近海でも見つかったが、20年ほど前にアフリカ以外では初めて、インドネシア・スラウェシ島で捕獲され、「マナド」が世界に大きく報じられた。
 97年、マナド沖での漁で網に掛かり、市場に出されていた大型の魚をたまたま居合わせた米国の海洋生物学者が写真に撮り、帰国後の調査で判明する。翌年には生きたまま捕獲され、標本として保存調査が行われた。さらに2007年、マナド沖で3度目の遭遇。釣り上げた漁師は「蛍光灯のように光る緑の目と、足を持っていた」と語っている。そして翌年にも近海で発見。マナド周辺は実にシーラカンスが生息する海なのだ。
 もう一つ、マナドの名前を有名にしているものがスキューバダイビングだ。北西の沖合に浮かぶブナケン島。遠浅のエメラルドグリーンが、いきなり濃い群青の深みになる。海の底へと垂直に沈んでいく「断崖絶壁」の「ドロップオフ」というわけだ。場所によっては千メートルを超えるという。世界有数のスポットとして、ダイバー憧れの舞台。もっとも、その呼び名は「メナド」ではあるが…。
 と、知ったかぶりで書いているものの、全く無縁の世界だった。東南アジアの高校生との相互理解を促進する国際交流基金のプログラム「日本語パートナーズ」としてマナド派遣が決まり、「えっ、一体どこ?」と調べていくうちに、そんな特色を知った。ならばと、「六十の手習い」で潜水をスタートしたばかりなのだ。
 緊張感いっぱい、こわごわと海の中へ。それでも心強いのは日本人インストラクター、久保里香(さとか)さんの存在だ。京都出身。ダイビングに魅了されて大阪での会社員生活から一転してこの道に。マナドでの生活は3年目を迎える。マンツーマン指導で、いざ絶壁に沿ってのウォールダイビング。目が慣れるにしたがって、驚きの世界が広がった。
 伸ばした手の先に、色とりどりの魚の乱舞。小魚を狙う回遊魚の群れも見える。岩陰で休んでいたのか、大きなウミガメが目の前に飛び出してきた。自分の斜め上にも別のアオウミガメが悠々と泳いでいる。水深4、5メートル辺りだと、太陽の光が水中にまで届く。紫や黄色などのサンゴを輝かせて、神々しいほどの海中絵を見せてくれる。
 タンクを背負い、息を吸えば体は浮くし、吐けば沈む。でも、実際の上下動とは数秒の時差があり、慌てて手を使って浮上しようとしたり、浮き上がりすぎて、またもがいたり。初心者のドタバタは尽きないが、重力から解放されたような浮遊感、そして海の生物と共存しているという感覚に包まれて、なんとも不思議でぜいたくな時間だった。
 実は、シーラカンスが見つかったのも、このブナケン島そば。専門家はドロップオフの深いところに生息しているのでは、と推測している。もしかして、またここでシーラカンスと遭遇できるかも。そんな夢が広がる場所である。(佐々川修二=マナド在住)

 ささがわ・しゅうじ 1957年生まれ。広島市南区出身。広島国泰寺高卒。読売新聞大阪本社で主にスポーツを担当。定年後に国際交流基金の「日本語パートナーズ」に参加し、マナドで活動中。金沢、徳島、神戸マラソン出場など、観光を兼ねたランニングが趣味。

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