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【イギリス】春告げる音と光の供宴
欧州は3月末、夏時間に切り替わった。春を告げる白い花「スノードロップ」が庭に咲き始めたのは2月。その頃から日照時間が長くなるのが目に見えて分かり、クロッカスやスイセンが競い合うように開花する。こうして花々が日常の風景を彩り始めると、ついに冬の終わりを宣言するようにサマータイムがやってくる。
英国に移り住んで8度目の春だが、ここでは日本の花見のような特筆すべき風習は見当たらない。だからこそ「毎春」実施のコンサート「クラシカル・スペクタキュラー」に好奇心を抱かずにはいられなかった。
厳密には春と秋の年2回行われ、チケットは毎回完売という根強い人気を誇るこのイベントは、今年30周年を迎えた。親しみあるクラシック15曲を演奏するのはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。これに合唱団やオペラ歌手、さらにはレーザー、花火、大砲などが駆使され、音と光の供宴を繰り広げる。
会場は伝統的な夏の音楽祭「ザ・プロムス」の舞台としても有名なロイヤル・アルバート・ホール。立ち見席を含めると約5540人の収容能力を持つ。赤で統一されたシートやボックス席のカーテンなどに見覚えはあるものの、実際に足を踏み入れると、その巨大な空間とあふれる気品に圧倒される。
座席は、イベントに合わせて4種類のレイアウトがある。数年前に見たバレエ「白鳥の湖」では、フィギュアスケート会場のように中央に大きな楕円(だえん)形の舞台を配し、これを取り巻く形で客席が広がっていた。今回はコンサート用のスタンダード形式。早めに会場入りし、準備中のステージにカメラを向けていると、「エリザベス女王が利用される席の撮影もお忘れなく」と、スタッフが舞台の真向かいにあるボックス席を指さす。「先週はハリー王子があちらに見えました。手を振ったら笑顔で振り返してくれたのよ」と、とっておきのエピソードまで披露してくれた。
コンサートはシュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」で幕を開けた。司会兼指揮者を務めるのは、ウエスト・エンドのミュージカルの指揮や音楽指導で実績を持つジョン・リグビー氏。同氏がこの日に誕生日や金婚式を迎えた来場者の名前を読み上げ、会場が祝福の拍手に包まれるほほ笑ましい一幕もあった。ハイライトは、英国の作曲家エルガーの「威風堂々」の第1番「希望と栄光の国」で、聴衆は事前に配布されたユニオンジャックを威勢よく振りながらの大合唱となった。この曲が愛国歌の一つだということは、恥ずかしながら後で知ったことだ。
滑らかで伸びのある高音でコンサートを盛り上げた英国のソプラノ歌手アナ・パタロングはこの日、鮮やかなピンクのドレスに身を包んでいた。しかし、これは彼女の前向きな選択ではなかったらしい。報道によると、親EU(欧州連合)派のアナは前日、欧州旗をテーマにした黄色のドレスに、青の帯、さらに旗と同じ数の星形のモチーフをあしらったネックレスを着用していたが、演出側は誤解を招きかねないと変更を促したのだという。
EU離脱の期限も延期し、混迷の極みにある現状を象徴するエピソードだが、現実を忘れて春のひとときを堪能したかった聴衆も少なくなかったはず。来春のコンサートで「希望と栄光の国」を歌う人々はどんな思いでユニオンジャックを振っているのだろう。(畠中千鶴=ロンドン在住)
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