リポーター発

イギリス

【英国】「家族の祝祭」華やぐ街

2019/12/17
モルドワインが販売されているナショナルギャラリー前の特設マーケット

モルドワインが販売されているナショナルギャラリー前の特設マーケット

 ロンドンの街並みは、11月からクリスマスの演出で一気に華やぐ。繁華街リージェント・ストリートでは、天使のイルミネーションがトンネルのように張り巡らされ、行き交う人々を優しく見守る。街のあちこちに現れるクリスマス・マーケットでは、人々が甘くスパイシーなホットワイン「モルドワイン」を飲み、冷えた体を温める。
 クリスマスが一大イベントであるのは英国に限った話ではないが、この国の人たちは12月25日の過ごし方をかなり念入りに計画する。この間も地下鉄で会社の同僚と見られる2人がクリスマスをどこでどう過ごすか真剣に話し込む場面に遭遇した。25日は公共交通機関が休止するため、自家用車やタクシーを利用しない限り、イブと同じ場所で過ごすことになる。そんな事情も影響しているのかもしれない。
 そもそも英国がクリスマスを現在のようなスタイルで祝うようになったのは19世紀に入ってからのこと。例えばクリスマスツリーを飾るのは、ビクトリア女王の夫でドイツ出身のアルバート公が祖国の伝統にならいウィンザー城にクリスマスツリーを置いたのが始まり。ツリーを囲む王室一家のスケッチが1848年に公開されると、人々の間で習慣化した。エリザベス女王の祖父に当たるジョージ5世は1934年のクリスマススピーチで「クリスマスは家族の祝祭」と述べており、このイメージはすっかり定着しているように思える。
 今年もスーパーや公園脇の特設会場には緑鮮やかなクリスマスツリーが所狭しと並ぶ。高さや種類により値段はまちまちで、先日に見た値段表では安いものが20ポンド(約2800円)、最高は85ポンド(約1万2千円)だった。自宅に飾られたツリーの下に用意されるのは、サンタクロースからの子ども向けの贈り物だけではない。休暇を共に過ごす全員が互いの分を用意するため、10人ほどが集まったパーティーに参加した際には、プレゼントのお披露目に1時間以上かかった。ある調査によると、英国の昨年のクリスマス休暇の平均支出は560ポンド(約7万8千円)で、欧州平均の396ポンド(約5万5千円)をはるかに超えた。ちなみに贈り物で最も売れたのはチョコレート、2位は本だった。
 渡英して以来、母国を離れてクリスマスを過ごす私を「家族」として受け入れてくれた何人もの人たちがいる。ある年にはフランス出身のご夫婦が私と友人を自宅に招き、おいしいホットチョコレートとクリスマスの伝統菓子「ミンスパイ」をごちそうしてくれた。はしゃぐ4人の小さな子どもたちをあやしながら「私たちも母国を離れているから、家族と過ごせない人の家族になれてうれしい」と言った奥さんの言葉が忘れられない。
 広島を11月に訪れたローマ教皇フランシスコは、平和記念公園(広島市中区)で「命の神が、(私たちの)心を、平和と、和解と、兄弟愛へと変えてくださるよう」と祈念された。この一年に多くの人からいただいた優しさの「贈り物」に感謝しつつ、この地と故郷と世界中の人々が心穏やかなクリスマスを過ごされるよう心から祈っている。(畠中千鶴=ロンドン在住)

リージェント・ストリートのイルミネーション

リージェント・ストリートのイルミネーション

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