リポーター発

インドネシア

【インドネシア】日本語学習 熱く支える

2020/2/3
6月の来日に向けて日本語を学ぶ若者たち

6月の来日に向けて日本語を学ぶ若者たち

 ジャカルタ南部の小高い丘に、研修所はある。雨期なのに日差しは強烈で、気温が34度まで上がることも。日差しが照り付ける教育文化省の施設に、インドネシア各地から集まった320人もの若者が半年間、寝起きを共にして日本語を集中的に学んでいる。
 日本の病院や介護施設で働きながら看護師や介護福祉士として国家資格取得を目指す若者たちだ。日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づく受け入れで、2008年に国際交流基金の事業として始まった。ここで半年、さらに日本で半年の研修を受けた後、日本各地に散らばる。自分たちの将来を見据えた第一歩が、この研修所での生活なのである。その開講式。あいさつに立った日本語講師一同を見つめる、若者たちの希望に満ちた笑顔を忘れることができない。
 看護師は、大学や専門学校を卒業後の実務経験が必要とされており、20代後半が多い。しかし全般的には20代前半が大半だ。
 「候補者」と呼ばれる若者たちは2〜4人の寮生活で、午前8時半から午後5時近くまで1日7こまの授業。文法や漢字、聴解、読解などを学び、なかなかハードな日々ではある。
 日本での看護師を目指す29歳の男性は、サウジアラビアで2年間、帰国してからも2年間、看護師として働いてきた。妻と2人の子どもがいるが、別居して日本を目指すという。「看護師としての経験を積みたいし、将来は家族を呼び寄せ、日本で暮らしたい」
 教えるわれわれも20代からシニア層まで幅広い。日本語教師一筋という人が案外少なくて、雑誌編集者から高校の体育教師、衆院議員秘書まで多士済々である。これに講師陣を指導する教務やインドネシア人講師陣、候補者の生活をはじめ事業全体を支える調整員など、総勢約60人に上る。
 どうすれば、うまく日本語を教えられるのか。文法の教案を練り、漢字の教え方を考える。話すときのナチュラルスピードとは? 読解力を高めるには? 日本の社会事情をどうやさしい言葉で説明するか? 62歳のオールドルーキー。駆け出し日本語教師ゆえの試行錯誤の日々でもある。
 それでも教室は楽しい。先日の授業は、誘いの表現である「〜ませんか」。型どおりの例文を離れた会話練習では「〇〇さん、いっしょにビールを飲みませんか」「いっしょにすしを食べませんか」など、知っている言葉を総動員して、アドリブを展開。それに対して「いいですね」だけでなく「すみません。ちょっと…」と断りの表現も。
 熱のこもった演技に拍手が湧き起こることも。習いたての言葉を、自分のものとして表現してみたいワクワク感がストレートに伝わってくる。授業の準備に時間がかかるが、この達成感は何ものにも代えがたい。
 眠気を催しそうな午後の授業前に取り組んでいるのが「リズム体操」。音楽に合わせて両手を上下、前、横に伸ばす。広島の小学校で教わったことを、半世紀後に異国で再現している。
 6月の来日前まで、ここで日本語研修事業が続く。日本人とインドネシア人のスタッフ、そして日本での難関に向かう若者たちが、一丸となって取り組む。これもまた「ONE TEAM(ワンチーム)」なのである。(佐々川修二・ジャカルタ在住)

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