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【八橋装院(広島市安佐南区)高橋伸英社長】日本の縫製技術 守りたい

2019/7/15
高橋社長(左端)に取材する右から原さん、小西さん、吉川さん、西岡さん

高橋社長(左端)に取材する右から原さん、小西さん、吉川さん、西岡さん

 中国や東南アジアなどで製造された品がほとんどを占める日本の衣料業界。八橋装院(広島市安佐南区)は、国内生産を維持しようと取り組む。創業した亡き父の後を継ぎ、ものづくりに力を注ぐ高橋伸英社長に、事業への思いや縫製業界の現状について聞いた。
(聞き手は、安田女子大・小西望、広島女学院大・西岡聖奈、吉川晴香、広島市立大・原彰吾)

 ―国内縫製の現状と特徴は何ですか。
 国産の減少と輸入の増加に歯止めがかかっていない。2017年のデータでは、国内で販売しているアパレル製品のうち、日本製はわずか2・4%しかなかった。金額にすると3%。金額の方が高いというのは、日本製が高価ということ。中国や東南アジアで大量生産された商品の低価格競争が激化している。
 国内縫製は対応が早く、小回りも効く。海外だと船を使うので時間がかかる。さらに、コムデギャルソンなど国内の有名ブランドから来る注文は難しい品が多いが、高い技術があって応えられる。
 ―子どもの頃から、この仕事に興味があったのですか。
 幼稚園の頃から遊び場として会社に来ていたので、何となく継ぐのかな、と思っていた。しかし、おやじは後継ぎの話を一切しない。高校、大学時代は後を継ぐ気は全くなかった。
 しかし、大学4年の時に会社でトラブルが起き、おやじに「戻ってこい」と言われた。別の会社から内定が出ていたのを断って戻ったら「わしは戻れなんて言っとらん」と言う。それから20代はずっと確執と葛藤の日々。何度も辞めようと思った。
 それでも、同業他社で海外進出の立ち上げに携わるなどしながら何とか続けた。30代後半に「どうにかせんにゃあいけん」という思いになって後を継いだ。
 ―最近、日本製や国内の技術が注目されつつありますが、どう思いますか。
 興味を持ったら、実際にものづくりの現場を見に来て体験してほしい。見てやってみると一番よく分かる。僕自身、他の会社の現場を見るとわくわくする。うちもインターンシップや会社見学を受け入れている。
 ―自社ブランド「FUKUNARY(フクナリー)」を始めた背景を教えてください。
 自社製品は、うちの主力の相手先ブランドによる生産(OEM)を盛り上げるためにやっている。「面白そう」と感じ、やっているのが縫製工場であることを知ってもらえればと始めた。11年に残布で洋服「THE NPU」を作ったのが最初だ。
 フクナリーは「広島」をキーワードにしている。福山で製造している金糸や金箔(きんぱく)を織り込む「金襴(きんらん)織物」や尾道帆布を使った財布やかばんを作った。
 さらにインパクトのある素材が欲しい、と考えていた時、展示会でミカサ(広島市安佐北区)と一緒になり、ボールの生地を使えないか相談して商品化につなげた。今は、使わなくなったボールで記念品を作るサービスもしている。
 今後は素材の調達を国内全域に広げる予定だ。
 ―これからの展望は。
 国内の縫製技術を残したいという思い。売上高に占める自社製品の割合を3割で維持しようと思っているので、自社製品を増やしつつOEMも増やしていく。

 ▽たかはし・のぶひで 1994年3月に東和大工学部(福岡市南区、2011年に閉学)を卒業後、八橋装院に入社。同年7月被服縫製のボンニー(益田市)勤務、96年4月八橋装院グループ会社(出雲市)取締役を経て10年8月から現職。広島市安佐南区出身。

 ▽八橋装院 本社は広島市安佐南区西原。1959年創業、61年に法人化。コムデギャルソン(東京)や三井物産アイ・ファッション(同)などの商品を受託生産するほか、自社ブランド「フクナリー」を手掛ける。本社内と、商業施設ジ・アウトレット広島(佐伯区)内に直営店。恵比寿三越(東京)に期間限定で出店している。資本金3200万円、2019年3月期の売上高は1億5100万円。従業員数は、ベトナムからの研修生も含め30人。

【インタビューを終えて】
 安田女子大4年・小西望(21)
 国内にわずかに残る縫製工場の一つが広島にあることを誇りに思う。縫製を後世に残そうとする熱い思いに胸を打たれた。私も社会人になって将来的に広島に貢献できるような人になりたい。

 広島女学院大2年・西岡聖奈(19)
 高橋社長は「ぶれない個」を持っていた。国内縫製や伝統を残したい、自分たちで作った物は、自分たちで売りたいという強い思いがあふれていた。自分の意志を持ち、挑戦するからこそ、結果につながっていくと感じた。

 広島市立大2年・原彰吾(19)
 自分にしかできないことのために夢中で物事に励み、こだわりを持ってやり遂げる意志を持ち続ける大切さを、高橋社長に教えてもらった。自分も信じた道をより活動的に進もうと決意した。

 広島女学院大2年・吉川晴香(19)
 強い思いを持って仕事に取り組む姿に、働くという事の本質を見た。私も将来、ただお金のために働くのではなく、自分の中でしっかりした思いを持てる仕事に就き、それを大切にしながら働いていきたい。

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