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【村上農園(広島市佐伯区)村上清貴社長】 危機を好機に 成長の芽

2019/6/17
村上社長(左端)に取材する右から張さん、亀山さん、為石さん

村上社長(左端)に取材する右から張さん、亀山さん、為石さん

 エンドウ豆の若葉「豆苗」やブロッコリースプラウトなど発芽野菜のトップメーカー。1996年に堺市で腸管出血性大腸菌O157事件が起きて、カイワレ大根が売れなくなった。その影響で村上農園(広島市佐伯区)も廃業寸前に陥ったが、年商100億円近くにまで成長。村上清貴社長に、危機を乗り越え、事業拡大する思いを聞いた。
(聞き手は、広島大大学院・張E、広島経済大・亀山冬二、為石夢実)

 ―経営の危機をどうやって乗り切ったのですか。
 96年夏、堺市の学校給食で起きた集団食中毒で、カイワレ大根が原因として疑われた。当時、カイワレ大根の生産日本一で年商20億円あったのが、4割に減り、国内に7カ所あった生産センターを3カ所に絞った。
 それまでカイワレ大根しか作っていなかったが、たまたま事件の半年前に豆苗の栽培を始めていた。加熱して食べるから売れるかもしれない、と豆苗の生産量を増やして、社員総出で試食販売などをした。おかげで98年には黒字にできた。
 しかし、さらなる成長には豆苗だけでは足りない。ちょうど米国で、ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」ががんを予防する働きがあるという論文が発表された。ブロッコリースプラウトはアブラナ科でカイワレ大根に近い。比較的作りやすいと考えた。そこで高濃度にスルフォラファンを含むブロッコリースプラウトを開発した大学と、国内生産の独占ライセンス契約を結んだ。
 ―ブロッコリースプラウトや豆苗は、どうして売れるようになったのですか。
 ブロッコリースプラウトはテレビの健康情報番組などで取り上げられるようになったから。豆苗は2008年のリーマン・ショックで節約志向が高まり、可食部分を切った残りに水をやれば再び芽が出て食べられる、というお得感で注目されるようになった。11年に開設した山梨県の生産センターは、自動化が話題になった。
 ―O157事件という困難に直面した時、廃業しようと思わなかったのですか。
 「この先どうなるんだろう」という不安はあった。しかしやめようとは思わなかった。何とかしよう、と新しいことをした。
 何かをやる前に「無駄だろう」「やっても大したことにはならない」と考えても、何にもならない。多少のエネルギーが要るかもしれないが、まず最初の一歩を踏み出してやっていく。すると、必ず何か新しいことにつながったり、支援者が出てきたりする。ピンチはチャンスに変えられる。
 ―生産センターは大規模でシステム化されていて、一般的な農園や畑のイメージとは違っていましたが、栽培時に注意している点はありますか。
 システム化されていても、扱っているのは工業製品でなく「生き物」。わずかな環境の変化で生育状況が変わる。全国にあるセンターの作物を、いかに均一な品質にするかが重要な課題だ。日々の気温、天候の移り変わりに合わせて栽培方法を細やかに変えていく。これは機械任せにできない。人が考えて工夫する必要がある。
 ―今後の展望、目標を教えてください。
 昨年、レストランの料理を飾る「マイクロハーブ」シリーズを発売した。この生産を増やすとともに、海外の事業者に生産技術のライセンスを提供していきたい。そして、25年に売上高300億円、35年に1千億円を達成し、将来的には世界一の野菜メーカーを目指したい。

 ▽むらかみ・きよたか 1983年3月に広島大総合科学部卒業後、リクルート(東京)入社。93年11月村上農園入社。湯来農場長、取締役統括部長などを経て2001年に常務。07年8月から現職。周南市出身。

 ▽村上農園 本社は広島市佐伯区五日市中央。1966年10月に創業し、紅タデを生産。78年1月に法人化しカイワレ大根の生産を始めた。95年12月に豆苗の生産開始。99年10月にスプラウトシリーズの生産を始めた。本社近くや神奈川県小田原市、山梨県北杜市など関連会社を含め9カ所に生産拠点を構える。資本金1千万円。2018年12月期の売上高は98億9900万円。従業員数450人。

【インタビューを終えて】
 広島大大学院2年・張E(23)
 食卓へおいしい料理を届けるために、現状に満足せず新しい商品の開発に取り組んでいる点に魅力を感じた。挑戦し続ける村上社長の話に、私も何事にもまず勇気を出して一歩踏み出したい。

 広島経済大3年・亀山冬二(20)
 豆苗やブロッコリースプラウトへ懸ける熱意を知ることができた。さらに、村上社長の「日本の文化や食を大切にする」といった話を聞いた。自分自身も日本の伝統や食文化を維持していきたい。

 広島経済大2年・為石夢実(19)
 どうにもならないと悩むより、何とかしようと考える。それだけではなく、行動に一歩踏み出す。それが大切と学んだ。自分自身で考えることが、成長につながるのではないかと考える。

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