リポーター発

アルゼンチン

【アルゼンチン】マスク義務化 知事奮闘

2020/4/30
カタマルカ州の店では、客も従業員もマスクを着けている

カタマルカ州の店では、客も従業員もマスクを着けている

 新型コロナウイルスの感染拡大の予防策として欧米でマスクが見直されている中、日本の反対側アルゼンチンでマスク着用を義務化した州がある。日本への留学経験があるラウル・ハリル氏(56)が州知事を務めるカタマルカ州だ。全国隔離期間が始まって1カ月間で、国内23州のうち感染者が確認されていない数少ない州の一つとなった。
 カタルマカ州は、首都ブエノスアイレスの北西約1200キロに位置する。面積は10万平方キロで中国地方の3倍以上あるが、人口はわずか約39万7千人。とはいえ、州都のサン・フェルナンド・デル・バジェ・デ・カタマルカ市には15万人が暮らす。
 ハリル知事は27年前の1993年、交換留学生として1年間、京都外国語大に留学した。「『日本の奇跡』と呼ばれる戦後の復興と高度経済成長を目のあたりにして、実は奇跡などではなく、計画性を持って仕事を全うするとともに、対話と日々の努力のたまものだと知りました」と振り返る。
 州知事に就任してからは、日本で学んだことを踏まえ、人々の生活の質を高めようと考えてきたという。「アルゼンチンは衛生観念に乏しく、生活習慣に取り入れている人が少ない」
 今回の新型コロナの感染拡大に伴い、アルゼンチン政府は3月20日、全国に衛生非常事態を宣言。在宅令で行動制限して自宅待機や社会隔離の違反者を取り締まり、拘束や罰金徴収を可能にした。そしてカタマルカ州はさらに3月25日、外出時のマスク着用を義務付ける州知事令を発布。感染予防に努めた。アルゼンチンでは、マスクは不便で格好が悪い、または重病人のする物と敬遠されているにもかかわらず、である。
 「もちろんマスクが全てではありません」とハリル知事。「全国隔離期間が始まって1カ月。23州の中で、感染者が確認されていない2州の一つになったのは幸運もあったでしょう」と話す。4月中に病院を完成させるとともに、3Dプリンターで医療従事者用のマスクも製造。4月2日に銀行の窓口業務を再開する際、年金を払い出す高齢者が殺到するのを見越し、店頭に間隔を開けていすを置いた待合席を準備した上、銀行がある地区は車両を通行止めにした。
 ハリル知事には、日本人の「お兄さん」がいる。留学時代に学生寮で隣室だったのが縁で仲良くなり、一緒にサイクリングクラブに属して北海道一周も果たした。彼は今ハワイに住んでおり、会員制交流サイトで連絡を密に取って一般のニュースだけではなく、日本や米国のことを話し合うとともに、いろいろな助言をしてくれているという。
 それもあってか、ハリル知事は、全国で完全隔離が実施される前、大統領が全国の州知事をブエノスアイレスに集めた会議に、唯一欠席した。というのも、カタマルカ州の副知事との北米への出張から帰国直後だったので、自主的に自宅隔離でテレワークを始め、関係者も人との接触を避けることを促した。
 そんなカタマルカ州は1月末、カタマルカ日本協会の勧めで広島市長が会長を務める平和首長会議に、州内にある全36市が加盟することを決定し、4月1日に加盟した。ハリル知事は留学時代、広島を訪問し、このような所になりたいという願いを持ったそうである。(相川知子)

この記事に対するコメント
一覧

  • コメントはありません

  • この記事にコメントするへ
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧

  • < 前の10件
  • 1
  • 次の10件 >