リポーター発

イスラエル

【イスラエル】浮かび上がる社会の差異

2020/5/4
超正統派の人たちが行き交うメアシェアリーム地区の通り

超正統派の人たちが行き交うメアシェアリーム地区の通り

 エルサレムのわが家は、「ユダヤ教超正統派」と呼ばれる人々が集まって住むことで有名な、メアシェアリームという地区に隣接している。超正統派とは、特にユダヤ教の教えに厳格な人々で、イスラエルの人口の1割ほどを占めている。
 彼らの暮らしは独特だ。男性は一年中、冠婚葬祭の時のように、黒いスーツに白いシャツを着て、黒い帽子をかぶっている。そして、もみあげを伸ばした髪形が特徴。女性は、髪の毛を隠し、肌を見せない地味な格好をしている。結婚は見合いで、子だくさんだ。
 イスラエルはIT先進国だが、彼らの多くはテレビやネットを使わない。ユダヤ教を勉強し、伝統を守る存在として、国から生活保護を受けている。イスラエルは男女とも皆徴兵制であるが、超正統派の人々はこれも免除とされてきた。
 その超正統派が今、新型コロナウイルスで注目を浴びている。その特殊な生活スタイルから、多数の感染者を出したためだ。
 イスラエル政府は、新型コロナへの対策では常に先手を打ち続けてきた。国内感染が広がる前から、感染が広がった国からの入国制限や、帰国後14日間の自宅隔離政策を強硬に進めてきた。国内感染が広がり始めると、毎晩のようにネタニヤフ首相が会見を開き、矢継ぎ早に対策を打ち出してきた。
 内容は、10人以上の集会禁止、外出は10分以内で100メートル以内、人との距離は2メートル以上、といった分かりやすく、具体的なものだった。そして、破った人には罰金や禁錮刑まで科せられるよう法改正し、警察権力を使い、対策の徹底を図っていった。
 携帯電話の位置情報を使って、自宅隔離者の行動を監視し、また感染者と接触した人の把握を図る話まで進められた。戦争で有事に慣れていて、安全保障が何より優先のこの国の国民は、政府の厳しい対策は、国を守るために必要な措置だと考え、受け入れているようだった。
 しかし、残念ながら感染者は急増。そして、その半数は超正統派とみられている。新型コロナの情報が行き渡りにくいのに加え、ラビと呼ばれる宗教指導者の、国の政策よりも宗教行事を優先する考えが、影響力を持っていることが原因だった。政府の外出禁止令に従わず、集団での礼拝や葬儀をしていた。
 ネタニヤフ首相は、超正統派の支持者による宗教政党を、重要な連立パートナーとしてきたが、国民からの批判も受け、超正統派の住む地区を封鎖。取り締まりを強化した。ラビとの話し合いも進め、政府のルールを守るよう説得した。こういった取り組みが功を奏したのか、新規の感染者は減っている。
 コロナ禍は、その社会の特徴を大きくあぶりだすものでもある。日本でも、地域、世代、所得、情報、ITリテラシーなど、さまざまな違いが生み出す問題が出てくるであろう。今後、注意深く見ていくことが大事だと考える。(内藤徹)

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