リポーター発

イスラエル

【イスラエル】未来の和平へ 共に学ぶ

2020/6/8
ユダヤ人とアラブ人が共に学ぶ校舎

ユダヤ人とアラブ人が共に学ぶ校舎

 イスラエルは、世界各地から集まったユダヤ人により1948年に建国された。それにより、以前から住んでいたパレスチナ人を守ろうとするアラブ諸国との間に中東戦争が起こった。現在、この地の治安は比較的落ち着いているが、紛争は根本解決していないままである。
 私の住むエルサレムでは、ユダヤ人とアラブ人がそれぞれ住む場所が、東西に分かれている。さらに、その周りには分離壁があり、壁の向こう側にはアラブ人が住むパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区が広がっている。パレスチナ自治区に住むアラブ人は、特別な許可がないと壁のこちら側に来ることはできないし、こちら側のユダヤ人もパレスチナ側に行くことは禁じられている。
 このエルサレムに、ユダヤ人とアラブ人が共に学ぶ、ハンド・イン・ハンド(ユダヤ人・アラブ人教育センター)という名のイスラエルの学校がある。イスラエルの人口は、ユダヤ人が約75%を占めているが、アラブ人も約2割いる。ユダヤ人とアラブ人は、通常別々の学校に通うが、この学校では双方が半数ずつ、一緒のクラスで学ぶ。使う言語は、それぞれの母語であるヘブライ語とアラビア語。授業の中で、お互いの文化、歴史などを学び、小さいころから相互を理解する機会をつくっている。
 この学校では、「お互いを敵でなく隣人として理解する」ことを大切にしている。知らないことが恐怖を生むので、争いをなくすためには相互理解が大事というわけだ。しかし、現実には、相互理解は非常にデリケートで難しい問題だ。例えば、毎年5月にはイスラエルの建国記念日があり盛大にお祝いをする。しかし、実はアラブ人にとってはパレスチナ難民を生むきっかけとなった悲しい日である。この学校では、それぞれの立場で見る視点を大事にしている。
 そして、ここで学ぶ生徒は互いを友だちとして育っていくが、18歳になると徴兵制の壁に直面する。ユダヤ人は、男性約3年、女性約2年の徴兵が義務付けられているが、アラブ人は徴兵されない。そして、軍隊に入ると、パレスチナはイスラエルの敵として再教育されてしまう。この学校の卒業生たちは、「未来の理想を目指す教育」から、「いまだに続く現実の世界」に戻され、課題に直面することになる。さらに、この学校を批判的に見ている人もいる。数年前には和平に反対する過激なユダヤ人グループに、校舎の一部が放火される事件があった。
 相互理解によって社会が変わるには、相当長い年月が必要であるし、現実の世界では、和平とは反対の方向に動く力も強い。それでも、この学校の教員や保護者は将来を見据える。教育による意識の変化が社会を変える力となることを信じ、子どもたちに未来の和平を託している。
 教育が社会の課題に直接つながり、教員や保護者が生徒とともに取り組んでいる姿や、風当たりもある中で、信念に基づき理解し合うことで社会を変えようとする動き。日本の教育や社会活動においても学ぶことが多いと考える。(内藤徹)

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