リポーター発

香港

【香港】メディアがイメージ形成

2020/7/6
香港であった抗議活動

香港であった抗議活動

 中国新聞が広島東洋カープや原爆平和を取り上げ、人々が同じ紙面を見て語り合うように、メディアは地域の話題をつくっていく。その積み重なった話題は、地域を象徴するものになる。メディアは地域を伝えるだけではなく、その地域で共有されるイメージをつくる存在でもある。香港の抗議活動へのイメージ形成においても、メディアは重要な役割を果たしてきた。
 昨年6月の逃亡犯条例改正の反対運動以来、香港では1年以上、反政府運動が行われてきた。香港には世界各国のメディアが集まっている一方で、香港に根差すメディアも多い。体制寄りから民主派寄りまでさまざまな新聞、テレビがある。体制寄りのメディアは抗議者の過激な行為に、民主派寄りのメディアは香港政府や警察への批判に焦点を当てる。結果として普段見ているメディアによって個々人の抗議活動へのイメージが大きく異なる。
 抗議活動におけるメディアは、マスメディアとは限らず、テレグラムやフェイスブックのような会員制交流サイト(SNS)も多く用いられる。そこでは抗議活動への参加が呼び掛けられるだけではない。誰もが情報の発信者となり、抗議活動の方向性について議論も交わされる。数万人が見るページやグループもあり、SNSとはいえ既存のメディア以上の影響力を有するものもある。SNSは多種多様なページからどんな情報をフォローするかを読み手が選べるので、既存のメディア以上に、人によって目にする情報が異なる。
 結果として、香港の人々の多くは論争を避けるため、相手の政治思想が分かるまでは抗議活動や政治の話をしない。普段得ている情報があまりにも異なり、分かり合えると思っていないからだ。子が親と政治的論争でけんかし、その後ずっと家に帰らなくなったという話もよく聞く。昨年11月の区議会選挙も小選挙区の特性上、民主派が圧勝したが、体制派も4割ほどの得票率を得ている。
 抗議活動が進むにつれ、メディアはさらにローカルな動きに焦点を当てるようになった。昨年6月以降郊外に抗議活動が広がったのに伴い、特定の地域や団地の情報だけを取り上げたSNSのページが増えていったのだ。
 既存のメディアも各地での動きを生放送も含めて伝えていく。政府庁舎のような象徴的な建物の前だけではなく、幼い頃から知る街で警察と抗議者が衝突するシーンを見た人々は、これまでにない緊迫感を感じただろう。
 これらのメディアはグローバルな動きにも影響を与えようとする。香港の民主化には国際社会の後押しが不可欠と考え、ツイッターなどで香港の抗議者側の主張を世界中に知らせようとする人も多い。民主活動家、周庭氏のツイートなど、日本も含めた世界のインフルエンサーや政治家にリツイートされるものも少なくない。最近では民主派寄りの中文紙「りんご日報」が突如英語版の記事配信を開始した例もある。
 このように多種多様なメディアが人々の抗議活動への異なるイメージを形成し、ローカルとグローバル双方の文脈に抗議活動を広げた。しかし、香港国家安全維持法はこれらのメディアの自由を制約するかもしれない。抗議者が自身の意見を伝えようと続けてきた活動は、伝えることが簡単ではなくなる時代に、どのような形になるのだろうか。(石井大智)

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