リポーター発

イスラエル

【イスラエル パレスチナ自治区】シャバット 戒律守る生活

2020/9/15
シャバット中で静まりかえったエルサレムの街

シャバット中で静まりかえったエルサレムの街

 私が小学生になったばかりの頃、日本では学校の休みは日曜日だけで、土曜日は午前中に授業があった。そのうちに第2、4土曜日が休みになり、いつのまにか土日は休みというのが当たり前になった。週末はほとんどの店が営業していて、買い物や映画観賞、散髪もできる。深夜でもコンビニに行けば大抵の物が手に入る。繁華街に行けばおいしいご飯が食べられるし、お酒も飲める。それは、あらためて考えることもないほど当たり前なことだった。
 でも、私が現在住んでいるエルサレムではそうはいかない。エルサレムは三つの宗教の聖地で、キリスト教とイスラム教、ユダヤ教が共存している。キリスト教は日曜日、イスラム教は金曜日、ユダヤ教は金曜日の日没から土曜日の日没までを休みとしているのだ。
 イスラム教徒の多い東エルサレムでは、金曜日にはほとんどの店が閉まっている。開いているのはホテルのレストランか、キリスト教徒が営業するお店が数店程度だ。バスの便数も少なくなる。そして、日曜日にはキリスト教徒のお店が閉まる。キリスト教とイスラム教の子どもが通う学校では、金曜日と日曜日が両方とも休みになる。
 エルサレムの西側にはユダヤ教徒が多い。ユダヤ教では、金曜日の日没から土曜日の日没までが安息日(シャバット)だ。シャバットに入る時には、日本で黙とうする時に流れるような無機質なサイレンが街に鳴り響く。
 日没が基準になっているので、シャバットの時間は少しずつ変わる。夏季は金曜日の午後7時ごろから始まるので、午後3時ごろにはほとんどの店が閉まり、皆帰り道を急ぐ。
 ユダヤ教徒はシャバット中に働かない。エルサレム内の電車やバスは止まり、ほとんどのお店は閉まる。普段はにぎやかな地区も、土曜日には静まりかえる。金曜日の夜や土曜日に開くバーやレストランは一部あるが、それは政府にお金を支払って営業しているらしい。
 厳密に言えば、電気のスイッチを入れることも労働とみなされるため、厳格なユダヤ教徒たちはシャバット中に車を運転しないし、携帯電話も使わない。エアコンのスイッチも入れない。シャバットに入る前に部屋の電気をつけ、料理の準備をすませ、作った料理を温め続ける保温機の電源を入れる。
 エレベーターのボタンも押さないので、ボタンを押さなくても自動で一階ずつ止まるシャバット用のエレベーターもある。一階ごとに止まってドアが開くので、高層ビル内の移動は相当な時間がかかるらしい。門外漢の私は「そこまでやらなくても」と思ってしまうが、ユダヤ教徒にとってシャバットは特別だそうで、徹底して戒律を守る人たちがいる。
 もちろん、気にせず車を運転し、エレベーターに乗る人たちもたくさんいる。病院や福祉施設など、休むわけにはいかない施設もあるが、多くの場合、シャバット中はイスラム教徒が働いているそうで、休みに対する姿勢が違う気がする。一個人の休みではなく「社会全体の休み」という感じがする。
 最初はこの生活が不便だったが、慣れてくると特に困らなくなった。金曜日には、電車がなくなる前に帰宅できるように仕事を片付ける。買い物は平日にするようになった。逆に今では、真夜中までこうこうと輝く日本の街が、少しせわしなく見えてしまう。(宇治川貴史)

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